生乳出荷量は前年と同水準
欧州委員会によると、2019年7月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比0.5%増の1361万5610トンとなった(図9)。
また、2019年1〜7月の合計は、前年同期比0.3%増の9484万1250トンとなった。同期間の出荷量を加盟国別にみると、アイルランド(同10.2%増)、英国(同2.8%増)、ポーランド(同2.1%増)などは増産となった一方、オランダ(同2.6%減)、イタリア(同1.2%減)などでは減産となった(表3)。生乳出荷量の増加が最も大きいのはアイルランド(前年同期比49万3210トン増)で、同国のみで、オランダ(同21万2800トン減)、フランス(同15万8180トン減)、ドイツ(同12万9950トン減)での減産をほぼカバーしている。
乳牛飼養頭数は、アイルランドで増加
5〜6月のEUの家畜飼養頭数調査によると、2019年の主要生乳生産国9カ国(スペインを除く)の乳牛飼養頭数の合計は前年比1.4%減となった(図10)。9カ国のうち増加したのはアイルランド(同1.6%増)およびベルギー(同0.6%増)のみで、ドイツ(同2.4%減)、フランス(同1.2%減)、英国(0.7%減)など主要生産国の多くで減少した。EUの乳牛飼養頭数は、環境問題への対応として減少傾向にあるが、1頭当たり乳量の増加により、生乳出荷量が維持されている状況にある。
このような中、アイルランドは、2011年以降9年連続で飼養頭数が増加しており、生乳出荷の伸びを支えている。同国は、2015年3月末に廃止された生乳クオータ(生産割当)制度の廃止をきっかけに国を挙げて増産を推し進め、乳製品の輸出拡大のためのプロモーションを積極的に行うなどしている。
EU各加盟国、干ばつ被害の農家に対する支援措置に合意
欧州委員会は8月28日、干ばつの被害を受けた農家に対する支援措置について、EU加盟国間で合意に達したと発表した。同措置は、被害農家の経済的支援および不足する家畜飼料増産を目的としたもので、欧州委員会は7月に同措置を加盟国に提案していた。
同措置には、農家のキャッシュフロー改善のための補助金の前倒し支払いや、緑化支払いの要件である「作物の多様化」、「生態系保全用地の維持」を緩和し、休耕地などでの放牧または家畜用飼料生産などを可能にするといった内容が含まれている。
なお、合意された内容は、補助金の支払いスケジュールといった内容について、7月の欧州委員会の発表とは異なるものとなっている。
詳細については、海外情報:『EU各加盟国、干ばつ被害の農家に対する支援措置に合意(2019年9月18日)』(
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002514.html)を参照されたい。
(調査情報部 前田 絵梨)