生乳不足により生乳価格は引き続き上昇
本年も乳製品の需要は堅調であり、生乳供給不足が続いている。
現地報道によると、大手乳業メーカーの生乳買付量は前年と比べて1割以上増加しており、生乳確保競争が激しくなっているとみられている。このため、2019年9月の生乳価格(主要10省・自治区)は、前年同月比7.2%高の1キログラム当たり3.7元(57円、1元=15.4円)となった(図20)。生乳不足は、環境規制や酪農家の収益低下による飼養頭数減少により、需要の増加に生乳生産が追いつかないためであり、短期的に回復することは難しいため、今後も価格は上昇すると考えられる。
需要を満たすため乳製品の輸入量は増加
各品目の輸入状況は以下の通りであった。
生乳不足を補完するため、飲用乳やヨーグルトの原料となる全粉乳のうち、豪州からの輸入量は、干ばつなどによる生乳生産量の減少に伴う輸出価格の上昇を受けて減少した。一方、NZからは、中国の乳業メーカーが投資した乳業工場から全粉乳を購入することが可能である。このため、2019年1〜8月の輸入量は、前年同期と比べて13.2%増加し45万2000トンとなった。
育児用調製粉乳(以下「育粉」という)は、前年同期比15.4%増の23万9000トンであった。中国では高品質な海外産育粉が好まれており、特にNZ産の伸びが大きかった。これは、全粉乳と同様に、大手乳業メーカーがNZで生産した育粉を中国に大量に販売したことが要因とされている。
また、消費が急増しているヨーグルトの輸入量も増加しており、2018年はわずかに減少に転じたものの、2019年に入り再び増加し、同年1〜8月は前年同期比23.8%増の2万2000トンであった。現地報道によると、小規模な都市や農村で物流が発達したため、消費が伸びたと考えられている。今後急速に物流が発達する可能性があるため、輸入もさらに増加すると考えられる。
一方、チーズについては、輸入量は増加傾向にあるものの、前年同期比5.4%増と勢いを欠いている。また、バターは同43.6%減と大幅に輸入量が減少した。この2品目については、需要が飽和してきたのか、ヨーグルトのように一時的に落ち着いているだけなのかは不明である(表8)。
(調査情報部 寺西 梨衣)