ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 中国の飼料需給をめぐる内外の情勢と今後の見通し
国務院による「十三五計画」には、畜産物の生産数量目標や、トウモロコシなど飼料原料となる穀物の作付面積目標が示されている。これに基づき各種政策が実施されることになる。
また、中央一号文書(注1)にも食糧から飼料への転換や、サイレージ用トウモロコシなど良質な飼料の増産について記載されていることから、飼料生産は国の重要政策のひとつとなっているといえる。
(注1) 毎年年頭に発表される、政府がその年の方針や優先課題を示す文書。
中国政府は、トウモロコシの安定供給を確保するため、2008年から北部4地域(黒竜江省、吉林省、遼寧省および内モンゴル自治区)を対象としたトウモロコシの臨時備蓄制度を実施してきた。これは、供給過剰となったトウモロコシを政府が「最低買付価格」で購入し備蓄する制度であるが、農家は安定した利益を得ることができるため、当該制度導入以降は作付面積および生産量ともに増加してきた。しかしこれにより、トウモロコシ在庫が過剰となってしまったため、2016年からは当該制度を廃止し、取引を自由市場に委ねた上で、農家に対しては作付面積に応じた直接支払いへと変更した(注2)。また、「十三五計画」によると、大豆などへの転作を推奨し、2015年には5.7億ムー(3800万ヘクタール:1ムー≒6.67アール)であった作付面積を、2020年までに5億ムー(3333万ヘクタール)まで減少させることとした。
(注2) 臨時備蓄制度の廃止については、海外情報「中国、トウモロコシ臨時備蓄政策を停止」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_001535.html)を参照されたい。
これら政策の効果もあり、2016以降は、作付面積、生産量ともに減少傾向で推移している(図8)。
また、中国のトウモロコシ輸入量は、需要量の1%となっている(表2)。トウモロコシの輸入は許可制となっており、関税割当の配分は、国家発展計画委員会によって決定される(注3)。今回調査した飼料メーカー4社のうち生産量10位以内の大手2社は輸入トウモロコシを利用している。輸入トウモロコシの方が安価であるため、割り当てられた枠は消化し、残りの必要量を東北部から調達しているとのことだった。
(注3) トウモロコシの輸入については、畜産の情報2017年1月号「中国の飼料需給動向〜穀物政策の変更と飼料需給をめぐる現状〜」P.94(https://www.alic.go.jp/content/000132729.pdf)を参照されたい。
中国では植物油の消費量が多い。米国農務省のレポートによると、2017年度(2017年10月〜翌9月)の食用油の消費量は大豆油が1650万トン、菜種油が860万トン、パーム油が290万トンであることから、中国では植物油のなかでも特に大豆油を好んで使用しているといえる。
大豆については、「十三五計画」において、2015年には0.98億ムー(653万ヘクタール)であった作付面積を、2020年までに1.4億ムー(933万ヘクタール)に増加させることとしている。このため、2015年には649万ヘクタールまで減少した作付面積は、2017年には824万ヘクタールまで拡大している(図9)。
しかし、国産大豆は小粒で油分が少ないため搾油に適さず、生産量も需要を満たすまではいかないため、前述の通り、国産のものは豆腐などに加工される一方で、搾油用を中心に大豆の輸入は増加してきた。2017年度は9410万トンの大豆を輸入しており、これは供給量の7割以上を占める(表3)。
一般的に、大豆1トンから大豆かすが800キログラム生産されるといわれており、大豆油を生産することで、一定量の大豆かすが安定的に供給されることになる。2017年度には7000万トン以上の大豆かすが生産され、これらはほぼ飼料用に供されている(表4)。なお、中国は、大豆かす自体も輸入しているが、わずかである。また、総需要量の1%強を日本やオランダなどに輸出している。