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海外の需給動向【豚肉/米国】  畜産の情報 2019年12月号

大幅な輸出増が見込まれる中、飼養頭数は過去最高を更新

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8月は日本を除くアジア向け輸出が前年同月比大幅増
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が2019年10月7日に更新した「Livestock and Meat International Trade Data」によると、2019年8月の豚肉輸出量は23万691トン(前年同月比16.2%増)と前年同月を大幅に上回った(表9)。輸出先別にみると、最大輸出先であるメキシコは前年同月をわずかに下回る6万2273トン(同2.7%減)であったが、中国/香港向けは前年同月の5倍を上回る4万4024トン(同408.6%増)となった。この結果、中国/香港向けが同月の米国産豚肉輸出量に占める割合も前年同月を13.7ポイント上回る19.1%となり、日本を抜いて第2位の輸出先となった。この他、同月は韓国やフィリピンといった、日本を除くアジアの国々に対する輸出量も前年を大幅に上回る水準となった。
 

 こうしたことから、2019年1〜8月の豚肉輸出量は182万8505トン(前年同期比3.3%増)となった。これは前年同期をやや上回る水準にすぎないが、同年10〜12月(第4四半期)の豚肉輸出量についてUSDAは、アジアにおいて豚肉需要が急増する可能性を織り込み、前年同期を29.7%上回る90万7000トンと見込んでいる。

飼養頭数は高水準を維持
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2019年9月27日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、同年9月1日時点の豚総飼養頭数は、前年比3.4%増の7767万8000頭となり、同時点としては、2015年以来5年連続で前年を上回っている(表10)。
 
 
 繁殖豚は同1.6%増の643万1000頭で、9月時点としては2013年以来7年連続で前年を上回った。この背景には、輸出が大幅に増加している中、と畜場の新設に伴って中西部のと畜処理可能頭数が増加し、肥育豚の需要が増加している状況があるとみられる。
 肥育豚は同3.5%増の7124万8000頭となった。区分別にみると、重量が重くなるほど前年比増加率が大きく、180ポンド(82キログラム)以上の区分は同6.4%増の1296万9000頭となった。

1腹当たり産子数は2四半期連続で11頭超え
 2019年6〜8月の分娩母豚頭数は前年同期比0.7%減の317万9000頭となった。一方、同四半期の1腹当たり産子数は、史上初めて11頭を超過した前四半期をさらに上回る11.11頭(前年同期比3.6%増)となった。こうしたことから、同四半期の産子数は同2.9%増の3530万6000頭となった。
 USDAは1腹当たり産子数がこれまで以上のペースで増加する可能性を示しており、高い生産性が期待される優秀な遺伝資源が商業生産レベルにまで浸透しているといった状況がこのような傾向を支えるとみている(図6)。
 

 他方で、分娩母豚頭数は減少傾向で推移するとみられ、USDAは2019年9~11月を前年同期比0.6%減の315万5000頭、同年12月〜翌2月は同0.1%減の311万頭と見込んでいる。

豚肉生産量は堅調に推移する見込み
 USDAは、飼養頭数の増加に伴って豚肉生産量も堅調に推移するとみて、2019年第4四半期以降の四半期別豚肉生産量について、表11の通り前年同期をやや上回って推移すると予測している。
 
 
 一方、USDAは、新たなと畜場の稼働に伴う米国と畜部門における競争の激化や、ASF(アフリカ豚コレラ)発生の影響を受けているアジアをはじめとする国外の堅調な豚肉需要によって肥育豚価格(注)は高値傾向で推移するとみており、2019年の通年平均価格は前年比6.7%高の100ポンド当たり49米ドル(1キログラム当たり119円:1米ドル=110円)、2020年は同18.4%高の同58米ドル(同141円)と予測している。
(注) 赤身率51%~52%の枝肉を生体重に換算した全米平均肥育豚価格。
 
(調査情報部 野田 圭介)