2019年1〜7月の牛肉生産量は前年同期比減
欧州委員会によると、2019年1〜7月の牛枝肉生産量(EU28カ国)は、前年同期比0.9%減の448万9200トンとなった(表2)。
主要生産国の牛肉生産量をみると、アイルランド(同5.7%増)、スペイン(同4.7%増)、ドイツ(同1.6%増)で増加した一方、オランダ(同7.5%減)、ポーランド(同4.3%減)、フランス(同2.9%減)などでは減少した。
また、同期間のと畜頭数は1504万頭(同1.5%減)となった。一方、1頭当たり枝肉重量は298.5キログラム(同0.6%増)となり、と畜頭数の減少による生産量の減少を、わずかながらカバーしている。
10月に公表した農畜産物の短期的需給見通しで、欧州委員会は、2019年上半期の生産量の減少の主な要因を、オランダ、フランスなどの主要生産国での飼養頭数の減少と、と畜頭数の減少とみている。2019年5〜6月のEUの家畜飼養頭数調査(EU28カ国中、14カ国による調査)によると、14カ国の合計の牛飼養頭数(乳用牛を含む)は、前年比1.5%減の8097万頭となっている。
また、2019年上半期の生産量の増加率が主要生産国の中で最も大きいアイルランドについて、欧州委員会は、最大の牛肉輸出先である英国のEU離脱の期日を見越し、と畜頭数が増加したものとみている。
2019年と2020年の牛肉生産量については、同見通しの中で、それぞれ前年比0.5%減、2020年を同0.7%減と、欧州委員会は見込んでいる(表3)。
牛肉輸出量は、主要輸出先の多くで増加
2019年1〜8月の牛肉輸出量(製品重量ベース)は、前年同期比5.0%増の15万9779トンとなった(表4)。
輸出先別に見ると、最大の輸出先であるボスニア・ヘルツェゴビナ向けは同11.7%増、香港向けは同40.6%増、フィリピン向けは同2.6倍など、主要輸出先の多くで増加した。また、中国向けは、量は6629トンと多くはないものの、同13.4倍と大幅に増加した。
なお、2018年の最大の輸出先であったトルコ向けの輸出量(1〜8月)は、2018年の2万9797トンから、2019年は698トンと激減した。トルコは、国内市場の需給均衡を図り、かつ価格変動を防ぐために、国内での需給がひっ迫した際に牛肉を輸入していると言われており、EUからトルコ向けの牛肉輸出量は、年によって大きく変動している。
欧州委員会は、同見通しの中で、牛肉輸出量は、ボスニア・ヘルツェゴビナ、フィリピン、イスラエルなどの既存の輸出先への増加と、中国といった新しい市場へのアクセスの改善により、2019年は前年比8.0%増となると見ている。また、2020年も輸出の拡大が続き同5.0%増と見込んでいる(表3)。
一方、2019年1〜8月の生体牛の輸出頭数は60万6196頭(「Global Trade Atlas」HSコードは0102。)となり、トルコ向け(前年同期比58.2%減)の減少により、同12.8%減となっている。なお、欧州委員会は、同見通しの中で、生体牛輸出量(枝肉重量ベース)を2019年は前年比16.0%減、2020年は同1.0%増と見込んでいる(表3)。
牛枝肉卸売価格は低迷
欧州委員会によると、2019年9月の牛枝肉卸売価格(EU28カ国)は、雄牛が前年同月比3.7%安の100キログラム当たり356.13ユーロ(4万3804円:1ユーロ=123円)、去勢牛が同9.7%安の同361.53ユーロ(4万4468円)となった。
2018年7月以降、雄牛、去勢牛の価格は、輸出需要が弱かったことに加え、2018年後半からの生産量の増加などにより、去勢牛で前年を上回った10月を除いて、前年同月を下回って推移した。価格の低迷は2019年に入っても続いており、牛肉生産量が前年を下回る中、輸出量が増加しているにもかかわらず、価格は前年を下回る水準で推移している(図3)。
(調査情報部 前田 絵梨)