令和元年11月の鶏卵卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり219円と前月から15円上昇し、2カ月連続で前年同月を上回った(図20)。
鶏卵価格は、例年、気温の低下とともに需要が回復し、最需要期の冬場に向けて上昇する傾向がある。本年も本格的な秋を迎え、外食チェーン店における卵を使用した販促メニューの提供やテーブルエッグへの需要の高まりに加え、一部の産地で9月と10月の台風被害による生産への影響から、相場が引き締まった。
今後について、供給面では、台風被害からの回復が見込まれることや生産調整からの回復が始まっていることから、生産量は回復基調で推移するとみられる。一方、需要面では、クリスマスや年末商戦の盛り上がりに加え、おでんやすき焼きなどの季節需要により、相場は引き続き最需要期に向けて上昇傾向で推移するとみられる。
元年(1〜10月)の採卵用雌ひなのえ付け羽数、前年同期をやや下回る
令和元年(1〜10月)の採卵用雌ひなのえ付け羽数は、8577万1000羽(前年同期比4.3%減)と前年同月をやや下回った(図21)。なお、過去5カ年(1〜10月)の平均採卵用雌ひなのえ付け羽数と比べると、わずかに上回る結果(1.5%増)となった。
鶏卵は、近年の堅調な需要を背景に、大規模化の進展などにより生産拡大が進み、需要を上回る供給により鶏卵価格が低下し、本年は2度の成鶏更新・空舎延長事業の発動など生産調整が行われた。これに加え、台風被害の影響もあり、採卵用雌ひなのえ付け羽数は2月以降、9月を除き、前年同月を下回って推移している。
え付け羽数の増減は、生産量に影響を与える一因となっており、え付けしたひなが産卵を開始するのは約5カ月後とされている。今後、本年の9月と10月に発生した台風被害からの回復が見込まれるものの、当面の間は、生産量は前年同期を下回ると予想される。
また例年、鶏卵価格は、最需要期に向けて荷動きが活発化することにより価格が上昇した後、年末年始に産地に溜まった在庫が1月に市中へ出回ることにより、一時的に価格が低下する。このため、年明け後の価格動向を注視していく必要がある。
日本産鶏卵、マカオ向け輸出解禁へ
農林水産省は、令和元年11月1日、条件付きでマカオ向けの日本産食用殻付き卵の輸出が可能になったと発表した。同輸出条件は、輸出される日本産食用殻付き卵が、鳥インフルエンザ清浄国または地域に由来すること、および人の食用に適することとしている。
現在、日本産鶏卵の主な輸出先は、香港、シンガポール、台湾、韓国、グアム、ハワイ、EUとなっており、香港だけで約99パーセントを占めている。今回輸出可能となったマカオは、平成23年から日本が輸出解禁を要請していた市場であり、今後、さらなる輸出の拡大が期待されている。
(畜産振興部 郡司 紗千代)