11月のフィードロット飼養頭数、3カ月振りに前年同月を上回る
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2019年11月22日に公表した「Cattle on Feed」によると、10月のフィードロット導入頭数は前年同月比10.2%増の247万7000頭、出荷頭数は同0.4%減の187万5000頭となった。
この結果、2019年11月1日現在のフィードロット飼養頭数は1183万1000頭と、前年同月を1.2%上回った。同頭数は8月まで、現行の形式で調査が開始された1996年以降過去最大の記録的水準で推移していたが、9月、10月はおよそ3年半ぶりに前年同月を下回っていた(図1)。
こうした状況について、現地報道などを踏まえると、2018年の子牛の出生頭数が多いためフィードロット飼養頭数は記録的水準で推移していたが、8月以降、タイソン社が所有するカンザス州の大規模牛肉加工処理施設での火災
(注1)により肥育牛価格が低迷したため、若齢の肥育もと牛を中心にフィードロットへの導入頭数が減少したものと思われる。この反動もあり10月のフィードロット導入頭数は好転したものの、10月の肥育牛価格が火災発生前の水準に至っていないため、生体重の軽い肥育牛を中心にフィードロット内での滞留が進んだ結果、出荷頭数が減少し、これらの結果として、11月の飼養頭数は再び記録的水準に至ったと考えられる(図2)。
注1:タイソン社の牛肉加工処理施設での火災については、海外情報「大規模牛肉加工処理施設で火災発生(米国)」(2019年8月22日)(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002500.html)にも関連情報を記載。
10月の牛と畜頭数、減少懸念がある中、前年並みの結果に
USDA/NASSが2019年11月27日に公表した「Livestock Slaughter」によると、10月の牛と畜頭数(連邦検査ベース)は、前年同月比0.2%増の292万6000頭となった。また、2019年1~10月のと畜頭数は3月、6月、8月を除いて前年同月を上回っており、前年同期比1.5%増の2762万頭となった(図3)。
タイソン社の牛肉加工処理施設の処理頭数は、全米の処理可能頭数の5~6%に相当する規模であることから、8月中旬以降のと畜頭数の減少が懸念されていた。
10月のと畜頭数が前年並みとなったことについて、USDAによると、パッカーは前年と同等以上のと畜頭数を維持しており、9~10月上旬にかけては週ごとのと畜頭数が前年比で10%以上増加したこと(注2)、さらに南東部の州においては、干ばつの影響によりと畜頭数の増加が顕著であったことを要因として挙げている。
なお、タイソン社は11月19日付けのプレスリリースにおいて、当該施設の復旧がほぼ完了し、12月第1週には肥育牛の受け入れおよび稼働を再開し、1月第1週までに完全稼働する予定を発表しており、1月以降は通常のペースに戻ることが予想される。
注2:タイソン社の他施設での代替と畜に加え、肥育牛価格が低水準であった中、堅調に推移した牛肉価格の恩恵を受け収益性が向上した他のパッカーにおいても、土曜日の操業などで施設稼働率を上げた結果、前年と同等以上になったものと考えられる。
(調査情報部 藤原 琢也)