成牛と畜頭数、干ばつにより引き続き増加
豪州統計局(ABS)によると、2019年9月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド州およびニューサウスウェールズ州で発生している干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加していることから、71万7800頭(前年同月比8.8%増)と、かなりの程度増加した(図4)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は31万7000頭(同1.7%減)と前年同月を下回った一方、雌牛は40万700頭(同18.8%増)と前年同月を大幅に上回った。と畜頭数全体に占める雌牛の割合は、55.8%と2018年4月以降、同年11月を除いて50%を上回っており、繁殖雌牛の淘汰による牛群縮小傾向は継続している。
1頭当たり枝肉重量は、比較的重量の軽い雌牛の増加に伴い284.2キログラム(同0.4%減)とわずかに減少し、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、20万3968トン(同8.4%増)となった。
フィードロット飼養頭数、7期連続で100万頭を上回る
豪州フィードロット協会(ALFA)と豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、四半期ごとに共同で実施している全国フィードロット飼養頭数調査の結果(2019年7〜9月期)をそれぞれ公表した。これによると、2019年9月末のフィードロット飼養頭数は、111万9329頭(前年比0.7%減、前回比2.4%減)と、2016年10~12月の調査時以来11期ぶりに前年同期を下回ったものの、7期連続で100万頭を上回った。
また、2019年7〜9月の穀物肥育牛と畜頭数は、77万頭(前年同期比3.0%増)とやや程度増加した。しかし、同期間における穀物肥育牛がと畜頭数全体に占める割合は、穀物肥育牛と畜頭数の増加以上に、干ばつの影響をより受けた牧草肥育牛のと畜頭数が増加したことから、34.6%にとどまった(図5)。
また、MLAによると、2019年7~9月の穀物肥育牛肉輸出量は、8万1233トン(同2.4%減)とわずかに減少した。輸出先国別に見ると、中国向けは、ASF(アフリカ豚コレラ)発生に伴う代替需要により、1万9990トン(同45.2%増)と大幅に増加した。一方、韓国向けは、1万3973トン(同16.5%減)と大幅に、日本向けは3万3518トン(同14.2%減)とかなり大きく減少した。
2019年牛肉輸出量、過去3番目に多いと予測
MLAは、「Industry projections 2019 October update」において、四半期に1度の牛肉生産量などの見通しを公表した。そのうち、2019年の見通しは表1の通り。
牛飼養頭数は、前回予測(2019年7月)と同値の2600万頭(前年比7.3%減)とかなりの程度減少を見込んでいる。と畜頭数は、主要肉用牛生産地域での干ばつにより、雌牛の淘汰が増加していることから、前回予測からやや上方修正し、840万頭(同6.7%増)とかなりの程度増加すると見込んでいる。これにより、牛肉生産量も、237万6000トン(同3.8%増)とやや増加を見込んでいる。
牛肉輸出量は、国際的な需要の高まり、例年を上回ると畜頭数の推移および豪ドル安による価格競争力の向上により、118万8000トン(同5.5%増)と、過去3番目に多くなると見込んでいる。
特に、2019年1〜9月の中国向け輸出量は、ASF発生による代替需要の増加により、前年同期比73%増となり、今後も大幅な増加を見込んでいる。8月中旬には、豪州と中国間の自由貿易協定に基づくセーフガード(SG)の発動基準である17万4500トンに達したためSGが発動し、関税が12%へ引き上げられたが、春節(旧正月)に向けて在庫を増やすため、この引き上げは需要に大きな影響を与えないとしている
(注)。一方、日本向けは、冷蔵牛肉は安定しているものの、このような中国などの需要増の影響により、冷凍牛肉の輸出量がかなり減少したことから、2019年1~9月の輸出量は、同7%減とかなりの程度減少したとしている。
注:豪州牛肉のSG発動については、海外情報「豪州牛肉に特別セーフガード発動(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002506.html)を参照されたい。
また、この中国の需要増は牛肉の需給に広範な影響を及ぼしており、豪州の米国向け加工用牛肉価格(90CL、FAS価格)を高騰させている。2019年11月第2週には1キログラム当たり840.6豪セント(前年同期比49.9%高、639円:1豪ドル=76円)と、過去最高値をつけた。
(調査情報部 菅原 由貴)