(1)生乳価格
欧州委員会によると、2019年10月のオランダの平均生乳取引価格は、前月比0.7%安の100キログラム当たり34.75ユーロ(4240円)となった(図2)。EUの同平均価格と比較すると、1.1%高い。オランダの同価格は、EU平均同様に需給により変動するものの、おおむねEU平均を上回って推移している。これは、生乳の仕向け先にチーズなどの高付加価値製品が多いことなどによる。
オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によるEU乳業別の同価格の比較によれば、オランダ最大手のフリースランド・カンピーナ社はEU中第3位の高価格となっている(表3)。また、第5位に同国のロイヤルAウェア社も入っている。
(2)乳製品の国内消費
オランダは、伝統的に乳製品を多く消費する国の一つである。1人当たりの年間消費量は、飲用乳こそ42.0キログラムとEU平均(60.7キログラム)を下回るものの(日本の1.4倍の消費量)、バターは4.0キログラムとEU平均の1.1倍(日本の6.7倍)、チーズは21.7キログラムと同1.2倍(同9.0倍)となっている(表4)。1人当たり年間乳製品売上高も、824ユーロ(10万528円)とEU平均(327ユーロ(3万9894円))の2.5倍となっている(図3)。
(3)乳製品の輸出
2018年の乳製品総輸出額は、前年からおよそ2%減の約77億ユーロ(9394億円)となった。生乳の減産に伴う乳製品生産量減のほか乳製品国際価格の下落などが要因だが、乳製品国際市場を全体的にみれば、アフリカや東南アジアなどの経済成長や人口増加などを背景として、需要は高まる傾向にある。
生産された牛乳・乳製品の3割強がオランダ国内で消費され、それ以外が国外に輸出される。ドイツ、ベルギー、フランスといったEU域内にそのうち約7割、中国、日本、韓国などEU域外に約3割が輸出される(図4)。輸出額ベースを見てもオランダの最も重要な輸出先はEU域内で、2018年のEU域内輸出額は約57億ユーロ(6954億円)と輸出額の約4分の3を占め、域内輸出先上位3カ国のドイツ、ベルギー、フランスのみで域内輸出額の7割を超える(図5)。なお、全世界におけるオランダ乳製品輸出量の割合(2018年)は5.0%を占める。これは、ニュージーランド、米国、豪州、ベラルーシに次ぐ世界第5位である(コラム1−図2)。
業界関係者に、このようなオランダ乳製品輸出の強みについて聞くと、その一つに業界団体の支援活動があった。乳業、貿易事業者らが乳製品を輸出する際には、輸出相手国ごとの特定の検疫上の課題に直面することが多い。そのような時に、オランダでは、乳業団体と生産者団体が共同で設立した酪農乳業チェーン協会(ZuivelNL)の専門部署が、同課題に対する政府との調整を担う。これは、乳業、貿易事業者らの円滑な輸出が、同国酪農部門全体の利益につながるとの考えから行われている。同国の乳製品輸出の強さは、このような業界団体の活躍に支えられている。
なお、オランダ乳業、貿易事業者らに話を聞くと、一様に日本市場を有望な市場として挙げる。日EU経済連携協定(EPA)による効果はもちろんのこと、特に日本市場においてチーズ消費が増えていることに着目し、輸出拡大に期待している。欧州地域はすでに成熟市場であり、日本も含めた新たな地域への輸出拡大は、輸出志向の同国にあっては、最大手のフリースランド・カンピーナ社にとっても、国内中小乳業、貿易事業者にとっても、最大の関心事項の一つである。