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海外の需給動向【牛乳・乳製品/米国】  畜産の情報 2020年1月号

チーズ価格の上昇とともに酪農の収益性が向上

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チーズ在庫の取り崩しが進む
 米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、米国産チーズは、価格では他国産を上回っているものの、輸出量は堅調に推移している。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2019年9月のチーズ輸出量は前年同月比12.0%増の2万7433トンとなった(表7)。輸出先別にみると、最大の輸出先国であるメキシコ向けは、追加関税措置により同国向け輸出が減退していた前年同月を30.6%上回る7775トンとなった。輸出先第2位の韓国も同9.3%増の4419トンと増加した他、アラブ首長国連邦向けは前年同月の約3倍となる874トンとなった。また、2019年1〜9月の輸出量をみると、メキシコ向けが本年5月まで課されていた追加関税措置の影響から前年同期比6.8%減の6万8579トンとなったものの、韓国向けが伸長していることなどから、合計では同3.2%増の27万4912トンとなった。
 

 
 また、米国内のチーズ消費量も堅調に推移しており、2019年1〜9月は前年同期比1.7%増の424万トンとなった。同期間の生産量は443万トン(前年同期比1.1%増)であったため、増加率では消費が生産を上回っている。業界紙によれば、米国では10月末のハロウィンや11月末の感謝祭の時期にピザの消費が増え、チーズ需要が高くなるとされる。一方で、貿易紛争に伴う損失を補償するプログラム(注1)などに基づくUSDAによるチーズの買い上げも9月以降、複数回実施されていることから、需給はひっ迫傾向にあるとみられる。現在、在庫は減少傾向で推移しており、米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2019年11月22日に公表した「Cold Storage」によると、10月末時点のチーズ在庫量は前月比2.3%減の60万8800トン(前年同月比2.4%減)となった(図14)。
注1:報復関税の影響を受けている商品の買い上げを行うことで全品目合計で最大14億米ドルの支援を実施するプログラム。詳細は、海外情報「貿易紛争の影響に苦しむ農家の救済策第2弾の詳細を発表(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002494.html)を参照されたい。

 


チーズ価格が急騰
 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)が毎週公表する「National Dairy Products Sales Report」によると、40ポンド・ブロックと500ポンド・バレルのチェダーチーズ卸売価格(注2)は、いずれも上昇傾向で推移している(図15)。特に500ポンド・バレルは急騰しており、10月27〜11月2日の週の平均価格は1ポンド当たり2.3012米ドル(1キログラム当たり563円:1米ドル=111円)となり、2018年初以来95週ぶりに40ポンド・ブロックの価格を上回った。USDAはこうした状況の一因として、メキシコ向け輸出需要増によって、500ポンド・バレルのチーズの需給がひっ迫していることを挙げている。
注2:米国におけるチェダーチーズの代表的な取引形態として、最終的に小売用スライスチーズなどに加工される40ポンド・ブロックと、粉チーズをはじめとする二次加工などに仕向けられる500ポンド・バレルの2種類がある。
 


クラスV乳価上昇に伴い総合乳価も上昇
 製品価格の高騰に伴って、連邦生乳マーケティング・オーダー(FMMO)(注3)においてチーズ向けと区分されるクラスVの乳価も上昇傾向で推移している(図16)。USDA/AMSは2019年10月30日、同月のクラスV乳価を、前年同月比20.5%高の100ポンド当たり18.72米ドル(1キログラム当たり46円)と公表した。こうした動きに伴って総合乳価も1月以降10カ月連続で前年を上回って推移しており、同月は同13.7%高の同19.9米ドル(49円)となった(図17)。
注3:生乳取引地域(オーダー)内で取り引きされる生乳について、4分類の用途別に最低取引価格を設定するとともに、生乳取引業者に対して生産者へのプール乳価支払いを義務付けている制度。クラスVはチーズ・ホエイ向け。
 

    
 

 
収益性の向上を背景に乳用経産牛頭数が微増
 USDA/NASSが2019年11月19日に公表した「Milk Production」によると、10月の乳用経産牛飼養頭数は前年同月比0.4%減の932万7000頭となり、2018年7月以降16カ月連続で前年を下回って推移している。しかし、乳価の上昇に伴う収益増を背景に生産現場では増頭意欲が生じているとみられ、2019年9月以降、微増傾向で推移している(図18)。現地専門家の中には、引き続き粗収益が2017〜18年の低水準を上回る水準で推移すれば、2020年上半期まで増頭傾向が継続するとの見方もある。
 

 
 なお、2019年10月の1頭当たり乳量は同1.7%増の880キログラムとなった。こうしたことから、同月の全米生乳生産量は同1.3%増の821万2000トンとなり、2019年7月以降4カ月連続で前年を上回って推移している。

(調査情報部 野田 圭介)