生乳出荷量は前年比増で推移
欧州委員会によると、2019年9月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比0.9%増の1254万4130トンとなった(図19)。
また、出荷量は、2019年6月以降4カ月連続して前年同月を上回って推移しており、2019年第1〜3四半期の合計は、前年同期比0.5%増の1億2062万5460トンとなった。同期間の出荷量は、EU第3位の生乳生産国である英国(同2.4%増)やアイルランド(同8%増)、ポーランド(同2.0%増)などで増加した。なお、EU最大の生乳生産国であるドイツ、第2位のフランス、第4位のオランダでは、上半期の減産が影響し、2019年第1〜3四半期の合計はそれぞれ同0.3%減(2462万2470トン)、同0.7%減(1850万1780トン)、同1.8%減(1039万500トン)ではあるものの、いずれの国の出荷量も8月、9月と連続して前年同月を上回った。
なお、欧州委員会は、10月に公表した農畜産物の短期的需給見通しでは、生乳出荷量を、2019年は前年比0.5%増、2020年は同0.7%増と見込んでいる。
乳脂肪および乳たんぱく質含有率は前年高で推移
欧州委員会によると、9月に出荷された生乳の乳脂肪含有率は、前年同月を0.04ポイント上回る4.07%、乳たんぱく質含有率は同0.01ポイント下回る3.42%となった(図20)。2019年に出荷された生乳の乳脂肪含有率は3月に前年同月を下回り、乳たんぱく質含有率は3月に前年同月同、9月に前年同月を下回ったものの、他の月については両成分とも前年同月を上回って推移した。欧州委員会は、飼料の質の向上やアイルランドなどの乳固形分の割合が高い国のシェアが増加したことなどにより、2019年上半期の乳固形分の割合が高まったとみている。アイルランドについては、牧草の生育が良かったため両成分の含有率が特に高かったとしている。
バターの生産量はやや増加
欧州委員会は、同見通しの中で、生乳の乳固形分の増加は、生乳出荷量の増加以上に、乳製品生産の増加に寄与するとみている。
2019年第1〜3四半期の主要な乳製品のうち、特に生産量の増加率が大きかったのはバターであった。バターの生産量は、2018年12月以降、10カ月連続で前年同月を上回って推移し、2019年第1〜3四半期の生産量は前年同期比3.9%増の170万6670トン
(注)となった(図21)。なお、欧州委員会は同見通しで、バターの生産量を、2019年は前年比2.5%増、2020年は同1.0%増と見込んでいる。
バターの生産量が増加する中、2018年6月の平均価格が100キログラム当たり580.44ユーロ(7万814円:1ユーロ=122円)であったバター価格は、下落傾向で推移しており、11月18日の週は、同362.99ユーロ(4万4285円)となった。欧州委員会は同見通しの中で、2018年のバター価格が高水準で推移したため、一部の加工食品でバターから植物油脂への代替がみられたとし、2019年に同価格が下落しているとはいえ、この傾向が戻るには時間がかかるとしている。このため、今後も、EUのバターの消費量は増加傾向で推移するとしつつ、2019年、2020年の増加のペースは弱まり、2019年の消費量は前年比1.4%増、2020年は同1.5%増と見込んでいる。
(注) バターの生産量は、EU27カ国の合計。ルクセンブルグの生産量は欧州委員会の統計情報に公表されていない。
(調査情報部 前田 絵梨)