ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 1〜10月の豚肉輸出量、中国向けが大幅に変動
豚飼養頭数、昨年に引き続き減少
カナダ統計局(Statistics Canada)が8月22日に公表した「Hog Statistics」によると、2019年7月1日時点の豚飼養頭数は1395万頭(前年比0.04%減)と、4年ぶりに減少に転じた2018年に引き続き前年を下回り、近年の増加傾向が一服した結果となった(図10)。過去最高を記録した2005年を8.2%下回る水準である。区分別については、繁殖豚は123万3200頭(同1.3%減)となり、こちらも2018年に引き続き前年を下回った(表7)。
この状況について、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2019年においては、マニトバ州(主要養豚地域)における豚舎の新設、中国などからのカナダ産豚肉への世界的な需要(ただし、後述の通り、中国向けの輸出については、禁輸措置により上半期に限定)による飼養頭数の増加が見込まれたものの、豚流行性下痢(PED)の影響、生産者の高齢化・後継者不足に伴う減少などもあり、前年並みの結果となったとしている。なお、2020年においては、繁殖豚の増加に伴い、総飼養頭数は1%程度増加すると見込まれている。
中国向けの輸出、上半期は大幅に増加
カナダ統計局によると、2019年10月の豚肉輸出量は前年同月比2.5%増の8万5731トンとなった。この結果、2019年1〜10月の輸出量は、前年同期比0.1%減の79万4753トンとなった(表8)。
2019年1〜10月の輸出量を国別にみると、輸出相手先首位の米国向けは、米国内での豚飼養頭数が過去最高水準で推移していることから同13.9%減の18万4469トンと減少した一方で、第2位の日本向けは、カナダ産に対する日本からの需要の高まりなどにより同1.7%増の18万2833トンと増加し、輸出シェアはそれぞれ2割強となった。
一方、中国向けについては、2018年11月以降大幅に増加し、ピーク時の輸出シェアは4割にも達するなど、8カ月連続で最大の輸出先となっていたが、2019年6月以降は激減し、2019年1〜10月では同0.1%減の17万4041トンとなった(図11)。
中国向けについては、2018年8月に同国で発生したアフリカ豚コレラ(ASF)により国内の飼養頭数が減少した結果、北米の中でも追加関税が課されていないカナダ産豚肉への引き合いが強まったことから大幅な増加傾向で推移していた。
しかし、2019年6月25日、カナダ政府は、成長促進剤であるラクトパミンの残留および偽造検査証明書が発覚したことなどを踏まえ、中国政府の要請により中国向け豚肉(および牛肉)輸出に係る輸出許可証明書の発行を停止した。この結果、2019年7月以降の中国向け輸出は激減し、10月まで継続している(注)。
なお、カナダ政府は11月5日、同輸出許可証明書の発行を再開すると表明しており、11月以降の中国向け輸出数量はある程度回復するものと思われる。
注:中国向け輸出許可証明書の発行停止については、「カナダ豚肉産業にみる多様性と肥育豚価格の算定方式をめぐる議論」(畜産の情報2019年11月号)(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000834.html#title6)にも関連情報を記載。
(調査情報部 藤原 琢也)