11月は香港、台湾を除き、主要国向けで総じて減少
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、米国の牛肉輸出量は、世界的な牛肉需要増などを背景に過去最高となった2018年の反動もあり、2019年11月は前年同月比8.1%減の11万930トンとかなりの程度減少し、11カ月連続して前年を下回った(表1)。しかしながら、2019年全体で見ると、過去2番目の高水準ペースを維持している。
輸出先別にみると、首位の日本向けは同13.8%減の2万8104トンとかなり大きく減少したほか、第2位の韓国向けも同4.8%減の2万2598トンとやや減少したものの、第3位の香港向けについては同8.6%増の1万5153トンとかなりの程度増加した。
この結果、1〜11月の輸出量は前年同期比4.6%減の125万5005トンとなった。輸出先別では、韓国、台湾を除く主要輸出先で前年を下回る一方、絶対量は多くないものの、中国に加え、インドネシア、フィリピンなど東南アジア諸国が前年を上回る状況となっている。
中国向けについては、中国国内でのASF(アフリカ豚熱)発生に伴う豚肉からの代替需要もあり、同34.7%増の1万2058トンと大幅に増加した。さらに2020年1月15日、米国トランプ大統領と中国劉副首相の間で、米中経済貿易協定の第1段階の合意が署名された。米国産牛肉に課されている追加関税は削減されなかったものの、中国が、月齢制限(30カ月齢未満)の撤廃、合成ホルモン(成長促進剤)の残留基準値の適用、米国の牛肉輸出施設の認定基準の見直しに合意したと発表された。現地報道によると、こうした非関税障壁の緩和により、米国産牛肉の中国向け輸出が大きく増加する可能性も指摘されている。
なお、USDAは、2019年の輸出量は他国との競争に押され前年を下回るものの、2020年については、過去最高であった2018年を上回る水準にまで回復(増加)すると見込んでいる。
このような状況について、米国食肉輸出連合会(USMEF)は次のような見解を示している。
日本向けは、カナダなどCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加盟国と比較して関税面で不利な状況にあり、輸出量が減少している。しかし、2020年においては、日米貿易協定の発効に伴い競合国と同等の関税となるため、日本向け輸出量は好調に推移すると見通している。
韓国向けについては、11月の輸出量は減少したものの、2019年全体で見ると過去最高となった2018年をさらに上回る記録的ペースとなっている。韓国の冷蔵牛肉輸入における米国産のシェアは、2018年の58%から2019年は62%へと増加しており、冷凍品を合わせた全体数量においても、51%を占めるに至っている。
台湾向けも好調であり、2019年は4年連続で過去最高を記録する見込みである。
ASEAN(東南アジア諸国連合)向けの輸出量は前年同期比23%増と好調であり、これは、インドネシアからの旺盛な需要とフィリピン市場の着実な成長に支えられたものである。
2019年の牛と畜頭数、前年比1.7%増
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年1月28日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2019年12月の牛と畜頭数(連邦検査ベース)は、前年同月比6.6%増の271万2500頭とかなりの程度増加した。2019年のと畜頭数は、3月、6月、8月、11月を除いて前年同月を上回ることとなり、前年比1.7%増の3306万9400頭となった(図1)。
種類別に見ると、12月は、去勢牛が前年同月比3.0%増の129万1000頭、未経産牛が同10.4%増の83万2200頭といずれも増加した。2019年全体で見ると、去勢牛が前年比2.0%減の1629万7800頭と減少した一方、未経産牛は同7.1%増の981万8800頭と増加した。
12月のと畜頭数が増加した状況について、USDAによると、11月の中旬以降、去勢牛価格が前年を10%以上上回るなど好調に推移し、さらに(干ばつなどにより)一部生産者が飼料不足の状況となった結果、と畜頭数が増加したとしている。
未経産牛のと畜頭数の増加は、短期的には牛肉生産量の増加に寄与するものの、繁殖雌牛(後継牛)が減少することにつながるため、将来的な牛肉生産量の減少が懸念される状況となっている。
(調査情報部 藤原 琢也)