冷凍鶏肉の中国向け輸出が大幅に増加
2019年1〜11月の冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比12.1%増の27万5000トンであった(表5)。ASF(アフリカ豚熱)により消費が豚肉から鶏肉にシフトしている中国への輸出が増加している。2018年3月にタイから中国への輸出が解禁され、さらに2019年11月に輸出認定施設が15工場に拡大した。現地専門家によると、2020年も中国への輸出が拡大すると期待されている。
2019年の輸出鶏肉のうち、もも肉の8割、手羽の5割を中国が占めており、中国への輸出量がタイ全体の輸出量を左右していることがわかる(図12)。このことからも、今後も、鶏肉輸出は中国の豚肉および鶏肉需給に大きな影響を受けると考えられる。
2019年1〜11月の鶏肉調製品輸出量は、前年同期比5.9%増の54万4000トンであった(表6)。
現地専門家によると、2020年も5%の輸出増を見込んでいる。バーツ高は輸出に不利だが、輸出企業はインテグレーション化しており、自社で飼料原料を輸入し、鶏肉および鶏肉調製品を生産、輸出しているため、為替の影響を受けにくいとされている。また、米国から中国への鶏肉および鶏肉調製品の輸出が解禁されたが、タイは関税面などで米国より優位に立っており、影響は少ないと考えられている。このため、利益が確保できる日本向けに加え、近年需要が高まっている韓国や中国にも輸出を拡大するとしている。
鶏肉生産量は減少し、鶏肉卸売価格は上昇する見通し
2018年後半から鶏肉輸出量が増加したことにより、鶏肉卸売価格も上昇傾向が続いており、2019年12月は前年同期比12.2%高の1キログラム当たり49.9バーツ(179円、1バーツ=3.59円)となった(図13)。
現地専門家によると、原種鶏(GP)の輸入動向から2019年のひな生産量は3〜4%減になると考えられ、鶏肉生産量も減少する見通しである。
このような中、さらに鶏肉および鶏肉調製品の輸出が増加すると、鶏肉卸売価格は上昇を続けると考えられる。
(調査情報部 寺西 梨衣)