ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > バターを中心に主要乳製品の輸出は好調
バターは前年同期比36.8%増、脱脂粉乳は同22.2%増
欧州委員会によると、2019年1〜11月のEU乳製品の輸出は、品目ごとに異なるもののおおむね好調で、輸出量は生乳換算ベースで前年同期比9%増となった。
主要乳製品(バター、チーズ、脱脂粉乳、全粉乳)輸出量(EU28カ国、製品重量ベース)は、全粉乳を除き増加した。前年同期と比べて最も増加率が大きかったのはバター(16万2805トン)で同36.8%増(表8)、次いで脱脂粉乳(90万5483トン)が同22.2%増(表10)、チーズ(80万8538トン)は同5.2%増(表9)となった。一方、全粉乳(27万5576トン)は同13.0%減(表11)となった。
バターおよびチーズの最大の輸出先である米国は、2019年10月18日から欧州大手航空会社エアバス社へのEUの補助金が不当だとしてEU産農産品などに追加関税を課している(注)。この影響もあり、米国向けのバターおよびチーズ輸出量は、10月以降2カ月連続で前年を下回った。その一方で、米国以外の輸出先への輸出量が増えたことから、単月の輸出量は、バターが8カ月連続、チーズが5カ月連続で前年を上回って推移している。
なお、11月の脱脂粉乳の輸出量は、中国向け、アルジェリア向け、フィリピン向けなどの減少により15カ月ぶりに前年同月を下回った。なお、欧州委員会は、2019年10月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、EU産脱脂粉乳は在庫の減少と価格の上昇により、2019年末に向けて輸出が減速するものとみていた。
注:米国によるEU産農産品などへの追加関税の詳細については、海外情報「欧州酪農協会、米国によるEUへの追加関税に対し声明を発表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002521.html)を参照されたい。
乳製品別の主要輸出国(上位5カ国)の輸出量を見ると、バターは、最大の輸出国であるアイルランドが前年同期比58.7%増、オランダが同47.4%増、ドイツが同45.0%増となり、デンマークを除き増加した(表12)。なお、上位5カ国でEUの輸出量の80%を占めている。
チーズは、ドイツが同3.6%増、イタリアが同9.3%増などとなり、いずれの国も増加した(表13)。なお、上位5カ国でEUの輸出量の66%を占めている。
脱脂粉乳は、ベルギーが同25.2%増、フランスが同21.1%増、オランダが同2.1倍などとなり、いずれの国も増加した(表14)。なお、上位5カ国でEUの輸出量の73%を占めている。
一方、全粉乳は、同6.8%増となったデンマークを除き、減少した(表15)。なお、上位5カ国でEUの輸出量の76%を占めている。
2030年までチーズやバターの輸出量は増加する見込み
こうした中で、欧州委員会は2019年12月に農畜産物の中期的見通し「EU Agricultural outlook for markets and income 2019-2030」を公表した。
同見通しの中で、欧州委員会は、EUは乳製品貿易をリードする存在とし、EUの2030年の牛乳・乳製品輸出量のシェアは世界の輸出量の27%を占めると予想している。
今後、特に輸出が拡大するのはチーズとし、2030年までにEUのチーズ輸出量のシェアは世界の輸出量の34%まで拡大するとみている。
また、主要な輸出国であるニュージーランドの生産拡大が限定的であることから、世界のバター輸出に占めるEUのシェアは2030年までに同22%まで拡大する可能性があると見込んでいる。しかしながら、EUのバター生産量に対する輸出量の割合は1割未満にとどまるとし、バターの生産量の増加は、主にEU域内の需要増によるものとしている。
(調査情報部 前田 絵梨)