2019年の生乳出荷量は、前年比0.5%増
欧州委員会によると、EU(英国を含む28カ国)の2019年12月の生乳出荷量は、1276万5220トン(前年同月比1.2%増)となった。生乳出荷量は、2018年の夏の干ばつの影響により2019年の1〜2月は前年同月の水準を下回って推移していたものの、2019年3月以降は5月を除き前年同月比増で推移した(図18)。
また、EUの2019年の生乳出荷量は、前年比0.5%増の1億5822万トンとなり、2010年以降10年連続での増加となった(図19)。
今後も例えばチーズやバターのEU域内外での需要の増加が見込まれる中、欧州委員会は、2019年12月に公表した2030年までの農畜産物の中期的見通しで、環境面での制約などにより生乳生産の拡大のペースはこれまでよりは緩やかになるものの、生乳出荷量は2030年には1億7250万トンまで増加するとしている。
2019年の出荷量を国別に見ると、アイルランド(同5.3%増)、ベルギー(同2.6%増)、スペイン(同2.0%増)、ポーランド(同1.9%増)などでは増加し、2017年にリン酸塩排出削減のために乳牛の
淘汰を行ったオランダ(同0.7%減)では減少した(表12)。
オランダおよびアイルランドで飼養頭数が増加
2019年12月のEUの家畜飼養頭数調査によると経産牛飼養頭数は前年比1.2%減となった(表13)。主要生産国で飼養頭数が増加したのはアイルランド(同4.1%増)、オランダ(同2.4%増)およびベルギー(同1.6%増)のみで、ドイツ(同2.2%減)、ポーランド(同2.1%減)、フランス(同1.9%減)など他では減少した。EUの乳牛飼養頭数は、環境規制への対応として減少傾向にあり、育種改良などによる経産牛1頭当たり乳量の増加により生乳出荷量が維持されている状況にある(図20)。
乳製品輸出の拡大を進めるアイルランドは、2011年以降9年連続で飼養頭数が増加し、生乳生産量の拡大を支えている。
2017年の乳牛の淘汰により飼養頭数が減少していたオランダは、3年ぶりに増加に転じた。生産基盤の回復がみられるものの、同国ではリン酸塩の排出量規制により生産拡大が制限されている状況にある。
1月の乳価は、前年同月比高
欧州委員会によると、2020年1月の平均生乳取引価格(EU27カ国および英国)は、前年同月比1.0%高の100キログラム当たり35.36ユーロ(1キログラム当たり43.14円:1ユーロ=122円)となった(図21)。乳価は、生乳生産量の増加などにより2019年9月以後前年同月比安で推移していたが、2020年1月は5カ月ぶりに前年同月を上回った。
(調査情報部 前田 絵梨)