12月の生乳生産量、19カ月ぶりに前年同月並みに回復
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2019年12月の生乳生産量は、86万1700キロリットル(88万7600トン相当、前年同月比0.0%増)と、2018年5月以来19カ月ぶりに前年同月並みの水準に回復した。2019年7〜12月では、487万7500キロリットル(502万3800トン相当、前年同期比4.3%減)と依然として前年同期をやや下回っている(図22)。
12月の生乳生産量、ビクトリア州で今年度初めて前年同月を上回る
2019年12月は最大の生産州であるビクトリア(VIC)州およびタスマニア(TAS)州がそれぞれ前年同月比2.4%増、同3.8%増と前年同月を上回った。特にTAS州は、2019年7〜12月でも前年同期比1.0%増と唯一前年同期を上回っている。また、VIC州では12月に今年度初めて前年同月を上回った。VIC州の生乳生産は北部、西部および南部地域に分けられるが、北部および西部地域が前年同月を下回る一方、東部地域では前年同月比8.0%増とかなり生産が回復している。
一方、クイーンズランド州は前年同月比15.1%減と唯一二桁の減少となっている(表14)。
12月の乳製品輸出量、脱脂粉乳、バター類は引き続き大幅に前年同月割れ
DAが発表した2019年12月の主要乳製品4品目の輸出量を見ると、全粉乳が前年同月を上回る一方、脱脂粉乳、バター類およびチーズは前年同月を下回った。(表15、図23)。
全粉乳については、前年同月比11.7%増の5073トンと2カ月ぶりに前年同月を上回った。これは、前年同月の実績が少なかったこともある。
一方、脱脂粉乳は、同25.4%減の1万351トンと大幅に減少し、2019年2月以降11カ月連続で前年同月を下回った。2019年7〜12月の輸入量は前年同期比で4割減少しており、引き続き大幅な減少となっている。
バター類は、同27.6%減の1012トンと2019年6月以降7カ月連続で前年同月を下回った。2019年7〜12月の輸出量は前年同期比で3割減少しており、引き続き大幅な減少となっている。
チーズは、前年同月比11.0%減の1万5451トンと2カ月連続で前年同月を下回った。2019年7〜12月の輸出量は前年同期比で7.2%減となっている。
森林火災が生乳生産地域に影響を及ぼす
2019年11月以来、東部を中心として発生した森林火災は、2019年末から2020年初にかけて拡大し、主要な酪農地域であるニューサウスウェールズ州南部のサウスコーストやVIC州東部の東ギプスランドにも及んだ。
2020年1月上旬の報道によれば、これらの地域の酪農家では、森林火災により人や家畜への被害のほか施設や飼料が焼失するといった被害が発生した。また、山火事により道路が寸断され、タンクローリーが通れず生乳が集荷できない地域や停電の発生およびその長期化により、搾乳が困難となっている地域もあり、生乳廃棄が行われ、さらに、道路の寸断により不足する飼料の搬送が困難な地域もあった。
また、2020年1月下旬の報道によれば、今回の森林火災による被災した豪州南東部の酪農家は当時で100戸以下、死亡牛は少なくとも7000頭。死亡牛のうち多くは未経産牛のため、短期的な生乳生産量への影響は限定的とみられていた。集乳はほとんどの地域で再開したものの、すでに干ばつに見舞われている地域では水と飼料の供給が依然課題となっていた。
しかし、豪州では2月上旬、東部でまとまった降雨があり、この山火事は収束に向かった。また、この雨で洪水などの被害が発生する一方、長期化する干ばつで深刻な牧草や水不足となっていた農家にとっては恵みの雨となった。
(調査情報部 井田 俊二)