(1)バター
平成30年度の推定出回り量7万7900トン(機構調べ
(注))について流通経路および業種別、用途別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった。
注:機構調べとは、今回の調査結果に基づき推定したものを指す。
ア 流通経路
推定出回り量のうち、国産品(①乳業メーカーの自社製造と在庫取り崩しの合計)は6万700トン(出回り量に対する構成比77.9%)、輸入品(②乳業メーカーの取り崩し等と③機構の輸入放出の合計)は1万7200トン(同22.0%)となった(図1)。
乳業メーカーの利用(社内消費)は7000 トン(同9.0%)、乳業メーカーからの社外販売は5万8800トン(同75.5%)、機構から一次卸への売渡しは1万2100トン(同15.5%)となった。
乳業メーカーなどから需要者に供給される流通経路では、一次卸を通じた販売が5万9200トン(同76.0%)と大きなシェアを占めている。バターは、洋菓子やパンなどの加工食品や外食などの原材料としても使用されることから、需要者は多岐にわたっている。このため、 大口だけでなく比較的規模の小さい需要者が多いことを背景として、流通における卸売業者の役割が、他の原料乳製品と比べて重要となっている。
イ 業種別消費量
業種別消費量についてみると、業務用は5万3400トン(推定消費量に対する構成比68.5%)と最も多く、家庭用(小売業向け家庭用)は1万7500トン(同22.5%)、乳業メーカー(社内消費)は7000トン(同9.0%)となった。
業務用の内訳では、菓子メーカーが2万5300トン(同32.5%)で最も多い(図1)。国産品と輸入品の業種別消費量の内訳をみると、国産品は菓子メーカー向けが全体の32.6%と最も多く、次いで家庭用が28.3%となった。輸入品も菓子メーカー(社内消費)が全体の32.0%と最も多いが、家庭用は1.7%と少なく、乳業メーカー(社内消費)および加工油脂メーカーが共に19.8%を占めた(表1)。
国産品の供給が減少傾向にある中で、国産需要が底堅いことから、乳業メーカーは引き続き社内消費の一部を輸入品や他の乳製品で代替し、自社製品(国産品)を需要者に優先的に供給するという傾向が強まっている。
ウ 用途別消費量
バターの用途別消費割合をみると、品質志向で国産品を重視する菓子・デザート類向けが2万5300トン(構成比32.5%)と最も多く、次いで、家庭用が1万7500トン(同22.5%)、パン類向けが8400トン(同10.8%)、外食・ホテル業向けが8100トン(同10.4%)となった(図2)。
バターの用途別仕向けを平成29年度と比較すると、総消費量が増加(前年度比9.7%増)する中、菓子・デザート類向け(同16.6%増)やパン類向け(同12.0%増)が大きく伸びる一方で、外食・ホテル業向けはわずかに減少し(同1.2%減)、小売業向けは前年度並み(同0.6%)に留まった(表2)。
(2)脱脂粉乳
平成30年度の出回り量13万7400トン(機構調べ)について、流通経路および業種別、用途別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった。
ア 流通経路
推定出回り量のうち、国産品(①乳業メーカーの自社製造と在庫取り崩しの合計)は11万3700トン(推定出回り量に対する構成比82.8%)、輸入品(②乳業メーカーの取り崩し等と③機構の輸入放出の合計)は2万3700トン(同17.2%)となった(図3)。
また、乳業メーカーの利用(社内消費)は 4万8900トン(同35.6%)、乳業メーカーからの社外販売は7万8800トン(同57.4%)、機構から一次卸への売渡しは9,700トン(同7.1%)となった。
脱脂粉乳は、一般的に二次加工製品向けの原材料であることから家庭用の消費量は非常に少なく、はっ酵乳や乳飲料などを生産する乳業メーカー(社内消費)で使われる割合が高いことが特徴である。また、卸売業者を経由せずに 需要者に直接販売される割合が全体の15.7%で、バター(直販割合9.4%)と比べて高い水準にある。これは、大口の需要者が特定の業種(はっ酵乳など)に集中しているからである。
イ 業種別消費量
脱脂粉乳の業種別消費量をみると、業務用が8万7300トン(消費量に対する構成比63.5%)と最も多く、大手乳業の社内消費が4万8900トン(同35.6%)、家庭用が1200トン(同0.9%)とわずかであった。
業務用の内訳では、はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカーが2万9800トン(同21.7%)と最も多く、次いで乳業・アイスクリームメーカーが2万9100トン(同21.2%)で、これら二つで全体の約4割を占めている(表3)。また、国産品は各業種で幅広く使用されている一方、輸入品は乳業メーカー(社内消費)が約3分の2を消費していた。
脱脂粉乳は、バターに比べると乳業メーカーにおける社内消費の割合が高いが、国産品の供給が減少傾向にある中、前年同様、乳業メーカーが社内消費の一部を輸入品や調製粉乳などで代替し、需要者には自社製品を優先的に供給していることがうかがえる。
ウ 用途別消費量
脱脂粉乳の用途別消費量をみると、はっ酵乳・乳酸菌飲料向けが6万6800トン(構成比48.6%)と最も多く、次いで、乳飲料向けが2万2300トン(同16.2%)、アイスクリーム類向け が1万3500トン(同9.8%)となった。
バターと異なり、脱脂粉乳は消費量全体の約4分の3がこれら上位3用途で消費され、特にはっ酵乳・乳酸菌飲料向けは全体の半数近くを占め、最も多い状況となった(図4)。
業務用脱脂粉乳の用途別消費量を29年度と比較すると、上位3用途のはっ酵乳・ 乳酸菌向けが6万6800トン(前年度比3.9%減)、乳飲料向けが2万2300トン(同3.5%減)、アイスクリーム類向けが1万3500トン(同3.6%減)と、いずれも減少となったが、菓子・デザート類向けは6400トン(同48.8%増)となった(表4)。
(3) チーズ
ア ナチュラルチーズ(プロセスチーズ原料用以外)
平成30年度のナチュラルチーズ(プロセスチーズ原料用以外)の消費量21万8000トン(機構調べ)の種類別および業種別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった(図5)。
(ア) 種類別消費量
総消費量は21万8000トンとなり、うち輸入品18万5800トン、国産品3万2200トンとなった。種類別の内訳は、シュレッドタイプが10万7100トンと最も多く、次いで、クリームタイプが7万1000トンとなった。
シュレッドタイプは、輸入品が9万6100トン、国産品が1万1000トンとなっており、輸入品が約9割を占めた。また、クリームタイプも、輸入品が6万6600トン、国産品が4400トンと輸入品が9割を占めた。
シュレッドタイプの業種別の内訳は、小売業が3万1900トン(シュレッドタイプ推計消費量に占める構成比29.8%)、次いで、乳業メーカー、外食・ホテル、宅配ピザ、調理食品メーカーの順となった。
国産品の種類別の内訳は、シュレッドタイプが最も多く、次いでクリームタイプ、カマンベール、フレッシュ・モッツァレラなどの順となっている。
消費量のほぼ半数であるシュレッドタイプの消費が業務用および家庭用ともに堅調であり、消費量増加をけん引している。
(イ) 業種別消費量
業種別の内訳では、小売業が5万6700トン(全体に占めるシェアは26.0%)と最も多く、次いで乳業メーカーが4万3100トン、調理食品メーカー3万2600トンとなった(表5)。小売業のうち、輸入品は4万2300トン、国産は1万4400トンと、輸入品が全体の7割を占めた。また、乳業メーカーについても、輸入品が3万5800トンと全体の8割を占めた。
イ プロセスチーズ
平成30年度のプロセスチーズの国内製造量13万2900トンについて、機構が流通経路および業種別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった(図6)。
(ア) 流通経路
乳業等メーカーの国内製造量の大半である13万2500トン(推定出回り量に対する構成比99.7%)が、乳業等メーカーからの社外販売であり、その中で、一次卸への売渡しが8万7900トン(同66.1%)である一方、全需要の7割近くを占めている家庭用(小売業)への直接販売も3万8000トン(同28.6%)と高い割合を占めている。
(イ) 業種別消費量
家庭用は9万2300トン(消費量に対する 構成比69.5%)と最も多く、業務用は4万200トン(同30.2%)、乳業メーカー(社内消費)は 400トン(同0.3%)となった(表6)。また、業務用の業種別消費量(家庭用を除く)では、料理への使用が主体の外食・ホテル業が2万6500トン(同 19.9%)と最も多く、次いでサンドウィッチなどの調理パンなどへの使用が多いパンメーカー、調理食品メーカー、菓子メーカーの順となった。