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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2020年5月号

成牛と畜頭数は2020年2月以降減少傾向で推移、肉牛取引価格は過去最高を更新

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2020年1月成牛と畜頭数は前年同月を上回るも、2月以降は減少傾向
 豪州統計局(ABS)によると、2020年1月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州で継続している干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加したことから、64万2400頭(前年同月比10.1%増)とかなりの程度増加した(図10)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は30万4000頭(同5.7%増)と前年同月をやや上回った一方、雌牛は33万8800頭(同14.4%増)とかなり大きく増加し、26カ月連続で前年同月を上回った。と畜頭数全体に占める雌牛の割合は52.7%と、過去20年間の平均割合である48%を上回る高水準を維持している。
 

 
 1頭当たり枝肉重量は、比較的重量のある雄牛のと畜頭数がやや増加したことに伴い293.8キログラム(同0.6%増)と18カ月ぶりに前年同月を上回り、わずかに増加した。同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、18万8711トン(同10.7%増)と、5カ月連続で前年同月を上回った。
 しかし、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によれば、2月から3月中旬まで数週間で成牛と畜頭数が減少傾向にあり、3月第2週目の報告では11万頭(前年同期比26.4%減)と大幅に減少している(図11)。これは1月に続き、2月にも東部州でまとまった降雨があり、牧草の生育回復などが見込まれ、肥育牛の肥育期間の延長により、保留傾向が高まっていることによる。

 
 このまとまった降雨を受け、肥育業者による需要が高まり、肉牛取引の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、3月11日に1キログラム当たり766セント(521円、1豪ドル=68円)と、2016年8月に記録した同725セント(493円)を上回り過去最高値となった(図12)。
 
 
2月の牛肉輸出量、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により中国は減速、8カ月ぶりに日本がトップ
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2020年2月の牛肉輸出量は、9万2968トン(前年同月比2.0%減)と、前年同月をわずかに下回った(表3)。1月以降で見ると、2020年は前年同期比で2019年を上回っているが、先述の通り、最近の良好な降雨により、ここ数週間と畜頭数が大幅に落ち込んでいるため、輸出量は今後数カ月で減少すると見込まれている。

 
 主要輸出先別に見ると、日本向けは、2万3714トン(同1.2%増)とわずかに増加し、8カ月ぶりに中国を上回りトップとなった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国の需要に大きな影響を与えており、中国向けは1万6732トン(同12.4%減)とかなり大きく減少し、2019年12月(3万4264トン)の半分以下となった。MLAは、同国の需要は現在不安定であるが、富裕層による需要拡大とASF(アフリカ豚熱)発生による国内豚肉供給量の減少により、長期的には回復する確信がある一方、今後数カ月の間、他の輸出国が、これまで中国に輸出していた牛肉を他国へ輸出し始めることにより、多くの市場で競争が激しくなることを懸念している。

2019年の穀物肥育牛と畜頭数300万頭を超え、過去最高
 豪州フィードロット協会(ALFA)およびMLAは、四半期ごとに共同で実施している全国フィードロット飼養頭数調査の結果(2019年10〜12月期)を公表した。これによると、2019年12月末のフィードロット飼養頭数は、123万9563頭(前年比11.6%増、前回比10.7%増)と、前年比および前回調査(2019年9月)比でかなり増加した。これにより、2年連続、年間を通じてフィードロット飼養頭数が100万頭を上回ったこととなる。これは、QLD州およびNSW州を中心に継続している干ばつにより、牧草の生育が悪いことから、天候に左右されず安定的に肥育できるフィードロットへの仕向けが増加したことが主な要因となっている。
 2019年10〜12月の穀物肥育牛と畜頭数は、71万頭(前年同期比16.0%減)と大幅に減少したものの、2019年を通年でみると、303万頭(前年比1.3%増)とわずかに増加し、1991年の集計開始以降、過去最高を記録した(図13)。ただし、と畜頭数全体に占める穀物肥育牛の割合は36%と、2017年の40%からは減少した。これは、穀物肥育牛と畜頭数の増加以上に、干ばつの影響をより受ける牧草肥育牛が雌牛の淘汰の増加によりと畜頭数を増加させたことが一因であると考えられる。

 
(調査情報部 菅原 由貴)