ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 2019年の豚総飼養頭数は、前年比0.1%減
スペインの総飼養頭数は、前年比1.4%増
欧州委員会によると、2019年12月時点の英国を含むEU28カ国の豚総飼養頭数は、1億4805万頭(前年比0.1%減)となった(表6)。
内訳をみると、繁殖母豚は1183万頭(同0.4%増)、肥育豚(50キログラム以上)は6133万頭(同0.6%増)となり、子豚(20〜50キログラム)は3376万頭(同0.1%増)となった。
2018年は豚枝肉卸売価格の低迷などによりEU各国で飼養頭数が減少したことから総飼養頭数は同1.4%減であった。2019年は強い輸出需要のもと同価格は高い水準で推移していたものの、総飼養頭数は前年と同水準となった。
このような中、EU最大の飼養頭数を誇るスペインの総飼養頭数は、前年比1.4%増の3125万頭(EU全体に占める割合は21%)となり7年連続で増加した(図16)。第2位のドイツは同1.5%減の2605万頭(同18%)、第3位のフランスは同1.5%減の1351万頭(同9%)となり、両国ともに繁殖母豚、子豚、肥育豚のいずれも減少した。
2019年の豚肉生産量は、前年比0.6%減
欧州委員会によると、飼養頭数の減少などを受け、英国を含むEU28カ国の2019年の豚肉生産量は、前年比0.6%減の2371万3050トンとなった(表7)。
主要生産国別にみると、スペイン、フランス、オランダで増産となった一方、ドイツ、ポーランド、デンマーク、イタリアでは減産となった。
EU最大の豚肉生産国であるドイツ(522万6000トン)は前年比2.2%減となり、2017年以降3年連続で減少した。国内での豚肉消費量の減少や家畜福祉への対応などが、近年の生産量の減少の背景にあるとみられる。
第2位のスペイン(462万7180トン)は同2.1%増となり、2014年以降6年連続で増加した。同国は養豚産業を基幹かつ成長産業と位置付けており、生産量の拡大を図るとともに、世界各地への輸出を拡大させている。
2019年においても、ドイツはEU最大の豚肉生産国であるが、スペインとの生産量の差は年々縮小している(図17)。米国農務省は、スペインの生産量の増加は、ターゲットを絞ったマーケティング、大規模農場の統合、垂直統合(インテグレーション)、生産効率の改善などによる成果とみており、2020年はスペインがドイツを抜いてEU最大の豚肉生産国になると予想している。
飼料産業団体は欧州委員会に緊急措置を要請
欧州での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中、欧州委員会は2020年3月16日、各国が推し進める国境管理措置に関するガイドライン(注1)をEU加盟国に通知した。
このような中、欧州の飼料産業団体である欧州穀物・油糧作物輸出入組合(COCERAL)、欧州油脂・油糧粕協会(FEDIOL)、欧州配合飼料生産者連盟(FEFAC)の三者は3月17日に連名で、飼料供給に混乱が生じないように緊急措置を講じるよう欧州委員会に要請した(注2)。飼料産業団体三者はプレスリリースの中で、消費者が必要とする主要な食料(である畜産物)の供給および動物の健康と福祉を確保する観点から、飼料は家畜に対し毎日給与される必要があるとしている。
一方、3月19日には、同ガイドラインが加盟各国間での家畜の輸送の継続を求めていることに対し、35以上の動物・家畜福祉団体が連名で、COVID-19の感染拡大を受けた国境整備の強化により交通渋滞が発生している例を挙げ、家畜福祉の観点から、家畜のEU域外への輸送や8時間を超える家畜の輸送を一時的に禁止するよう、欧州委員会などに要請書を提出している。
(注1) 国境管理措置に関するガイドラインは、食料や医療機器などの不足を防ぎ、EU単一市場を確保した上でEU市民の健康を守るために通知されたものである。詳細については、「欧州委員会、新型コロナウイルスの感染拡大に対し、食品流通を含む国境管理措置に関するガイドラインを公表。欧州食品安全機関、食品を介した感染の証拠はないと報告(海外情報 2020年3月19日発)https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002646.html を参照されたい。
(注2) 詳細については、「欧州飼料産業団体、新型コロナウイルス発生に対応した飼料の安定供給に関する緊急措置を欧州委員会に要請(海外情報 2020年3月27日発)https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002655.html を参照されたい。
(調査情報部 前田 絵梨(現畜産振興部))