2019年の生乳生産量はわずかに増加し、乳製品需要も堅調
2019年の生乳生産量は、搾乳牛の増頭や生産性の向上が図られたことから、前年比1.2%増の3074万6000トンとなった(図30)。
同年の飲用乳およびヨーグルトの生産量は前年比1.3%増の2537万7000トンであった。中でも健康に良いとされるヨーグルトは、堅調な需要に後押しされ、生産が増加していると言われている。また、生乳の代替として広く使われている全粉乳などの粉乳類の生産量は、同8.7%増の105万2000トンであった(図31)。国産全粉乳は価格競争力が低く2013年をピークに生産量が減少していたが、2019年は増加に転じた。
供給不足により生乳価格は高値を維持
例年、需要期である年末や春節休み(1月下旬〜2月上旬)後は生乳価格が下降する傾向にある。2020年も下降傾向で推移しているが、恒常的に生乳供給不足であるため高値を維持しており、同年3月の生乳価格(主要10省・自治区)は、前年同月比5.3%高の1キログラム当たり3.78元(59円、1元=15.6円)であった(図32)。
現地専門家によると、2月上旬は、一部地域では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で物流が一時的に滞り、飼料の調達や生乳販売に影響が出ていた。このため、生乳廃棄や、販路を失ったことによる値崩れが起きていたが、全体では大きな影響はないとされている。
2019年の乳製品の輸入量は好調だが、育粉など一部の製品は大幅に減少
2019年は、全粉乳、脱脂粉乳、飲用乳、ヨーグルトおよびチーズの輸入が増加し、バター、育児用調製粉乳(以下「育粉」という)およびホエイの輸入量が減少した(表12)。
全粉乳や脱脂粉乳は、自由貿易協定を締結しているニュージーランド(以下「NZ」という)や豪州からの輸入量が多い。輸入量の85%を占めるNZについては、毎年年始に特別セーフガードが発動されているが、2020年も1月1日時点でセーフガード発動量を超過した。また、干ばつなどにより生乳生産量が減少した豪州からの輸入価格が上昇しているものの、輸入量は大幅に増加しており、中国国内の供給不足がうかがえる。
飲用乳、ヨーグルトおよびチーズについては、健康志向から子供向け商品を中心に需要が伸びており、国内生産が増加しているものの、輸入量も大幅もしくはかなり増加した。
一方で、バターの輸入量は大幅に減少しているものの、2016年、2017年並みであることから、消費が定着していないことに加え、2018年に輸入しすぎた可能性も考えられる。
また、2016年の「一人っ子政策」廃止後に需要が急増した育粉は、輸入量が増加傾向で推移していたが、2019年には減少に転じた。新生児数は、政策廃止直後は増加したものの、その後は二人目を出産する人が少なくなってきたことにより減少傾向にある(図33)。この傾向は続くと考えられており、育粉の国内生産が増加したことも考慮すると、今後の輸入量は減少すると考えられる。
なお、輸入ホエイの約7割は家畜用飼料に使用されるが、ASF(アフリカ豚熱)の影響で豚飼養頭数が減少したことにより飼料需要が減少したため、2019年の輸入量は大幅に減少した。しかしながら、豚飼養頭数の回復や牛肉増産の動きにより下半期の輸入量は前年並みに回復していることから、今後はホエイの輸入量も例年並みに回復するのではないかと考えられる(図34)。
(参考) 豚飼養頭数の回復については、「畜産の情報」2020年3月号「豚飼養頭数が回復の兆しを見せるが、輸入量は増加の見通し」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001018.html)を参照されたい。
(調査情報部 寺西 梨衣)