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国内の需給動向【令和元年(1月〜12月)の食肉の家計消費動向】 畜産の情報 2020年5月号

令和元年(1月〜12月)の食肉の家計消費動向

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財布のひもを締めるきっかけ多い中、イベント月には高単価商品が好調に
 

 令和元年は、堅調な食肉需要を背景に、改元に伴うGWの10連休や、訪日外国人観光客の増加、3連休の多い曜日周りなど、食肉需要が高まる要因が多く、例年よりもメリハリのある消費動向となった。以下、元年(1月〜12月)の食肉の家計消費を過去5カ年平均と比較して振り返る。

牛肉
 牛肉の元年の家計消費(全国1人当たり)を過去5カ年平均と比較すると、購入金額は上半期が堅調、下半期が一部低調という傾向となった(図15)。

 


 
 1月は購入数量・購入金額ともに平年を上回って推移した。2月は暖冬により食肉の消費が振るわず平年並みとなったが、3月は購入数量が平年をかなり大きく上回り、購入金額は平年をわずかに上回った。これは、量販店各社が実施した特売により、消費者の購入意欲が高まったとみられる。また、学校が春休みに入ることで、家庭での食肉購入量が増える時期であることや、前年より日曜日が多い曜日周りであったことも平年に比べて好調な売れ行きの後押しとなった。さらに、一般社団法人日本フードサービス協会が毎月公表している外食の市場動向調査のうち販売概況(以下「外食概況」という。)によると、当月は天候が昨年に比べて安定していたことから、外食産業も好調となった(図16)。


 
 春休みが明けた4月は、購入数量が平年をわずかに上回り、購入金額が購入数量の伸びよりもさらに上回っていることから、高単価商品が堅調となったことがわかる。一般社団法人全国スーパーマーケット協会が発行した2020年版スーパーマーケット白書(以下「白書」という。)によると、新天皇即位に伴う大型連休の前半には和牛が好調であったと報告されており、入学式や歓迎会などのお祝い事の時期が重なったこともあり、4月は和牛などの高単価商品への需要が高まったとみられる。
 5月、6月は、平年との比較でみると購入数量が好調、購入金額が低調という傾向が共通している。白書によると、それぞれ、GW、父の日などのイベント需要として国産牛がよく売れたが、長期連休明けは支出を引き締める傾向があるため、連休以外は不調であったとする声や、長梅雨によりBBQ用のステーキ・焼肉用商材が不調であったとの声もあり、結果的に購入金額の低調につながったとみられる。
 7月は購入金額が平年を大幅に下回った一方、購入数量は好調であった。これは日曜日が少ない曜日周りであったことに加え、国産相場が堅調であったことから、日常の食材として比較的購入しやすい輸入牛の売れ行きが好調であったとみられる。一方で、冷夏により引き続き、ステーキ・焼肉用商材が不調となったことに加え、長梅雨で外食産業も不調となった。
 8月は購入数量・購入金額ともに平年並みであった。9月から10月にかけては、消費税増税を控え食品以外への駆け込み需要に支出が優先されたことや、集中豪雨や台風が連休を直撃したことで、多くの店舗が営業時間の短縮や休業を余儀なくされたことから、購入数量および購入金額ともに平年を下回る結果となった。また、外食概況をみると、外食全体ではやや不調であったものの、焼き肉業態では引き続き前年を上回る売上高となった。
 11月は、土日・祝日が多い曜日周りであったことや天候の回復などから購入数量は平年を大きく上回ったものの、引き続き家計の引き締め志向を受け、量販店各社が積極的に輸入牛肉を取り扱ったことから、金額は平年をわずかに下回った。一方、外食産業は焼肉業態を中心に好調な動きとなった。
 12月は、購入数量、購入金額ともに平年を上回って推移したものの、前年比でみると購入金額は前年をわずかに上回り、購入数量は前年をわずかに下回った。白書によると年末にはすき焼き用の和牛の売上がよかったとの声がある一方、暖冬の影響で鍋物を中心に総じて動きが悪かったとの声もあった。こうした中、和牛相場は高格付牛の供給量が多く、需要期にもかかわらず、前月を下回る軟調な展開となった。

豚肉
 豚肉の元年の家計消費を過去5カ年平均と比較すると、購入数量では全ての月、購入金額では5月、8月、11月を除く全ての月において平年を上回って推移しており、豚肉需要は堅調に推移していることが分かる(図17)。

 
 1月は購入数量が購入金額の伸びよりもさらに大きく上回っており、平年よりも低単価商品が好調であったとみられる。白書によると、2018年から続く軟調な豚枝肉相場を背景に量販店各社が特売を多く打ち出したことで、購入数量はかなりの程度、購入金額はやや、いずれも平年を上回って推移した。2月は暖冬であったこともあり、盛り上がりに欠けたが、3月は牛肉同様、量販店による特売などにより、購入数量・購入金額ともに平年を上回った。
 4月は平年と比較すると好調に見えるものの、1月〜3月と比較すると低調な推移となった。これは学校の再開により家庭での消費が3月に比べて減少するこの時期に、豚枝肉相場が3月は前年同月比9.9%増、4月は同13.4%増とかなり大きく上昇したことも要因のひとつとみられる。5月の購入数量は平年を上回ったものの、前年と比較すると下回っており、購入金額も平年、前年ともに下回った。これは、改元に伴う10日間にわたる大型連休の中、ハレの日のごちそう食材として需要が牛肉に流れたことに加え、白書によると高値で推移した豚枝肉相場の影響により国産豚肉が不調とする声も上がっており、これらが影響したとみられる。
 6月は、連休明けに各家庭で家計を引き締める傾向があることから牛肉と比較して安価な豚肉の消費が伸びたことに加え、昨年が相場高で豚肉消費が振るわなかった影響もあり、購入数量は平年をかなりの程度上回る結果となった。7月も引き続き豚肉は好調な売れ行きとなった。8月の購入数量は猛暑における冷しゃぶ需要などが引き続き好調だったものの、7月の冷夏から一転したことによる国産相場の上昇の影響で、単価の安い輸入品が好調であったことから、購入金額は平年を下回って推移した。
 9月、10月は消費税増税に向けた他の物材への駆け込み需要などによる家計の引き締め、国産豚肉の高騰や天候不順などがあったものの、比較的安価な日常食材として、豚肉は年末まで大きく増減することなく推移した。一方で、台風やゲリラ豪雨など、自然災害に見舞われた秋口は、保存期間の長いハム・ソーセージの家計消費が購入数量・購入金額ともに好調であった(図18)。そうした状況の中、白書によると、年末はギフト需要が振るわなかったとする声もあり、年末にかけてハムの購入数量は平年をかなりの程度下回って推移した。

 
鶏肉
 鶏肉の元年の家計消費を過去5カ年平均と比較すると、購入数量は12月を除く全ての月で大きく上回って推移し、非常に好調な需要となった。また、購入金額を見ても、8月、11月、12月を除く全ての月で上回って推移し、鶏肉の需要は好調に推移し続けていることがわかる(図19)。
 

 
 1月から3月は、前年から続く相場安の影響などにより、購入数量・購入金額ともに平年をかなりの程度上回った。4月は過去5カ年平均比でみると好調に推移しているが、前年と比較すると、購入数量が大きく下回った。これは、前年の4月において、積み増した在庫を解消するために特売を多く行ったことによるものとみられる。
 5月は、好調な生産による相場安から、前年と比較すると、購入金額は下回り、購入数量は上回って推移したが、平年と比較するといずれも好調に推移した。6月は、引き続き相場安の影響で、購入金額・購入数量ともに平年をかなりの程度上回って推移した。その後、7月は相場が引き続き軟調で推移し、量販店各社の販促強化により購入金額は平年を下回って推移した。8月は、購入数量は好調であるものの、国産相場安の影響により、学校給食が夏休みに入るタイミングで、量販店各社が特売回数を増加したことから、購入金額は平年を下回って推移した。
 9月は、牛肉、豚肉と同様に他の物材への駆け込み需要で食費への支出が抑えられた影響により、購入数量は前年と比較すると下回ったものの、過去5カ年平均では上回る結果となった。10月は消費税増税による支出意欲の減退から、牛肉を中心とした高単価商品は振るわなかった一方、鶏肉は量販店各社の特売の増加により購入数量は平年をやや上回り、好調に推移した。一方で、相場安の影響から、購入金額は低調となった。最需要期の12月は、クリスマスが平日となったことや、暖冬による鍋物需要の減退などから、購入数量も前年、平年と比べてともに下回る結果となった。
 
(畜産振興部 岩井 椿)