令和2年2月の生乳生産量は、59万6543トン(前年同月比5.2%増)と6カ月連続で前年同月を上回った(図20)。
地域別に見ると、北海道は32万8165トン(同7.2%増)となり、都府県は、26万8378トン(同2.9%増)となった。
統計上は、都府県の生産量が4年ぶりに前年同月で増加となっているが、これはうるう年の影響によるもので、うるう年修正後
(注)では、 全国が57万5973トン(同1.6%増)、北海道が31万6849トン(同3.5%増)、都府県が25万9124トン(同0.7%減)となる。ただし、都府県の減少幅は縮小傾向にある。
用途別処理量を見ると、牛乳等向けが31万4113トン(同2.8%増)、乳製品向けが27万8794トン(同7.9%増)となった。乳製品向けのうち、チーズおよび液状乳製品等向けが減少する一方で、脱脂粉乳・バター等向けは14万5215トン(同18.4%増)と大幅に増加した(農林水産省「牛乳乳製品統計」、農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。
こうした中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、政府は2月27日、全国全ての小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校について3月2日から臨時休業を行うよう要請し、これを受けた休校に伴い学校給食用牛乳の供給が停止された。
このため、生乳を学校給食用牛乳向けから脱脂粉乳・バター等向けに変更することによって生じる価格差や、脱脂粉乳などの飼料用
への用途変更に要する経費などを支援する緊急対策を当機構が実施することとなった。
(注) 令和2年はうるう年に当たり2月が1日多いため、前年同月と同じ日数として算出した。
飲用牛乳等製造工場処理場が減る一方でチーズ製造工場処理場は増加
農林水産省が3月19日に公表した「牛乳乳製品統計(令和元年基礎調査)」によると、令和元年12月31日現在の牛乳処理場及び乳製品工場は563工場(前年比8工場減)となった。うち、生乳を処理した工場の中の牛乳処理場は368工場(同5工場減)、同乳製品工場は139工場(同7工場減)となり、また生乳を処理しない工場は56工場(同4工場増)となった。
これを製品の種類別に見ると、飲用牛乳等の製造工場処理場は366工場(同7工場減)と減少傾向にある一方で、乳製品製造工場処理場は322工場(同3工場増)と微増傾向にある。特に、乳製品製造工場処理場のうち、直接消費用ナチュラルチーズの製造も含めたチーズの製造工場処理場は177工場(同2工場増)となり、平成29年以降3年連続で増加傾向で推移している(図21)。なお、本統計におけるチーズ製造工場処理場には、小規模なチーズ工房などは含まれないが、農林水産省によると、これらは年々増加傾向にあり、平成30年時点で319工場となっている。
また、生乳の貯乳能力は6万6626トン(同1.3%増)となった。生産能力では、飲用牛乳等が毎時2943キロリットル(同0.2%増)、はっ酵乳が毎時725キロリットル(同1.8%増)と、増強されている。一方で、乳製品は、バター、チーズ、れん乳の生産能力がおおむね横ばい、クリームは毎時242トン(同3.6%減)とやや減少している。
小売店1店舗当たりのバター販売重量が増加
機構が公表した「小売店におけるバターの販売状況」によると、小売店1店舗当たりバター販売重量は、3月9〜15日(3月27日公表)において、9.46キログラム(前年同期比40.1%増)と、年度を通しても最大の数量となった。翌3月16〜22日(4月2日公表)では、7.21キログラム(同10.2%増)と落ち着きを取り戻したが、年度最終週であった3月23〜29日(4月10日公表)においては、8.94キログラム(同33.0%増)と再び増加した。こうしたことから、令和2年1〜3月の販売重量は、85.82キログラム(同6.7%増)と、前年同期をかなりの程度上回った。
例年、バレンタインデー以降の年度末の時期は消費が落ち着くが、今年は、COVID-19の拡大に伴う外出自粛などにより、消費者が一時的に食品などを買い備える動きがあり、バターの販売重量も増加したものとみられる。加えて、一部マスメディアなどによる、バターなどの乳製品を特集した番組が重なったことも要因と考えられる。
なお、現在、バターの供給に支障を来している状況にはなく、3月25日付け公表の農林水産省「牛乳乳製品統計」でも、2月末時点のバターの民間在庫は2万6379トン(前年同月比19.5%増)と十分な水準にあり、今後も安定的な供給が見込まれる。
(酪農乳業部 山北 淳一)