令和2年3月の生乳生産量は、64万9750トン(前年同月比1.6%増)と7カ月連続で前年同月を上回った(図15)。地域別にみると、都府県は29万6113トン(同0.1%減)と前年同月並だったものの、北海道は35万3637トン(同3.1%増)と前年同月をやや上回った。
用途別処理量をみると、牛乳等向けが31万996トン(同3.4%減)と前年同月をやや下回った一方、乳製品向けは33万5017トン(同6.7%増)と前年同月をかなりの程度上回った。乳製品向けの中では、クリーム等向けが10万5533トン(同5.7%減)と、前年同月をやや下回った一方、脱脂粉乳・バター等向けは18万5440トン(同16.2%増)と前年同月を大幅に上回り、チーズ向けも4万1458トン(同5.4%増)と前年同月をやや上回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」、農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に起因するイベント・外出の自粛に伴い、外食や菓子店など向けの業務用乳製品需要が減少する中、3月2日以降の全国的な臨時休校に伴って学校給食用牛乳の需要が大きく減少しており、生乳を長期保存可能な乳製品の製造に仕向ける取り組みが強まっている。
このように急激な需給の緩和に対処し、生乳廃棄の発生を回避しつつ、新たな需要を創出するための各種緊急対策を、当機構が農林水産省の要請を受けて実施しているところである。
令和元年度の北海道の生乳生産量は400万トンを超え、都府県とのシェアの差も10年間拡大傾向が続く
令和元年度の生乳生産量は、736万2371トン(前年度比1.1%増)と前年度をわずかに上回った(図15)。月別の推移をみると、年度前半では、都府県が前年同月をわずかに下回って推移する中、北海道はおおむね前年同月並みで推移したため、全国としては前年同月を下回って推移した。一方、年度後半では、生乳生産量の過半を占める北海道で4カ月連続で前年同月を3%以上、上回るなど、堅調な生産が継続したことから、全国としても前年度をわずかに上回った。
地域別にみると、北海道が409万1890トン(同3.1%増)と、初の400万トン超となり、都府県は327万481トン(同1.3%減)と、一昨年や昨年と比べて前年度比減少幅が縮小した(図16)。特に、中国地域は29万8559トンと、前年度比増加幅は3.0%に達した。
なお、全国の生乳生産量に占める北海道のシェアは55.6%と前年度比で1.1ポイント拡大した。北海道が都府県を上回った平成22年度以降、シェアの差は拡大基調で推移している。
令和元年度の乳製品向け処理量、平成27年度以来4年ぶりに増加に転じる
令和元年度の用途別生乳処理量は、生乳生産量が前年度をわずかに上回る中で牛乳等向けが399万7124トン(前年度比0.2%減)と前年度をわずかに下回り、乳製品向けは332万768トン(同2.8%増)と前年度をわずかに上回った(表4)。
乳製品向けは前年度まで減少傾向にあったが、脱脂粉乳・バター等向けが159万4388トン(同7.4%増)、チーズ向けが42万4273トン(同0.3%増)と、いずれも前年度を上回ったことで、平成27年度以来4年ぶりに増加に転じた。
牛乳等向けの減少は、昨年の梅雨寒の影響による飲用需要の減少や本年3月の学校給食用牛乳の供給停止などによる。また、乳製品向けのうち脱脂粉乳・バター等向けの増加は、はっ酵乳需要の減少に伴い脱脂粉乳需要が減少するも、好調なバター需要を受けて仕向け量が増加していることに加えて、前述のようなCOVID-19拡大に伴う3月の配乳調整の結果によるものである。
(酪農乳業部 鈴木 香椰)