令和2年4月の鶏卵卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり202円(前年同月比28円高)と7カ月連続で前年同月を上回った(図17)。
例年、年明けに下落した同価格は、春先に向けて再び上昇した後、気温の上昇とともに低下する傾向がある。本年も同価格は年明けに下落した後、緩やかな上昇基調での推移となっており、4月は例年より低い気温が続いた半ばまで上伸した後、後半は暖かな気候が続いたことから下落傾向となった。
今後について、供給面では、気温の上昇により産卵率および卵重が安定する時期となることや、元年度は9月以降の採卵用めすひなえ付け羽数が前年を上回り続けている一方、成鶏更新・空舎延長事業の申請期間が冬まで続き、産卵期の採卵鶏が減少したこともあり、生産量は大きく増加することなく推移するとみられる。
一方、需要面では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による緊急事態宣言の延長に伴い外出やイベント実施の自粛要請が延長されることに加え、一部で学校給食の停止継続などにより業務用需要が低調となる見込みであるが、後述の通り、ホットケーキミックスなどとともに引き続き堅調な家庭内消費が見込まれることから、今後の動向が注目される。
令和元年のプレミックス生産量、8年ぶりの高水準
国内製粉メーカーや製菓メーカーで構成される日本プレミックス協会が公表した令和元年のプレミックス生産量は37万3630トン(前年比1.3%増)となった(図18)。
同協会によるとプレミックスとは、「ケーキ、パン、総菜などを、簡便に調理できる調製粉で小麦粉などの粉類(でん粉を含む)に糖類、油脂、脱脂粉乳、卵粉、膨張剤、食塩、香料などを必要に応じて適正に配合したもの」と定義されている。代表的な家庭向け商品としてはホットケーキミックス、てんぷら粉、お好み焼き粉などが挙げられる。これらの商品は調理をする際に一般的に鶏卵が使用されることから、鶏卵とプレミックスは併売商品と捉えることができる。プレミックスの生産量は、増減を繰り返しながらもおおむね増加傾向で推移しているが、元年の生産量は、平成23年以来8年ぶりに37万トンを超える高水準となった。
こうした背景の中、令和2年3月の鶏卵の家計消費購入数量は、1014グラム(前年同月比10.9%増)と好調に推移した(図19)。過去5カ年の3月の平均と比較しても15.2%増とかなり大きく上回った。鶏卵消費に関しては、COVID-19拡大による緊急事態宣言に伴い、外出自粛要請が発表されたことから、外食向けや消費量の約半数を占める業務・加工用需要が振るわないとの声が上がっている一方で、鶏卵の家庭内消費に期待が高まっている。消費者の巣ごもり需要を受け、一部小売店ではホットケーキミックスなどのプレミックスの品薄が続いているとの声も聞かれる。
5月6日には緊急事態宣言の延長が発表されたことから、外出の自粛も同様に延長となり、鶏卵の家計消費が需給に与える影響が引き続き注視される。
(畜産振興部 岩井 椿)