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牛枝肉卸売価格、新型コロナウイルス感染症の影響を受け急落
牛枝肉卸売価格は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を大きく受け、2020年3月以降、急激に下落している(図5)。欧州委員会によると、直近の4月13日の週平均の参考価格(A/C/Z-R3)(注)は、前週比0.5%安、前月比3.5%安の100キログラム当たり349.7ユーロ(4万1265円:1ユーロ=118円)となった。生産量が増える中、輸出が伸びず価格が低迷した2019年夏頃の低水準をわずか数週間で一気に下回った。前年比では4.7%安となっている。
価格の急落は、COVID-19の拡大を抑制させるため欧州全域にわたって外食産業が閉鎖している影響を大きく受けている。他の食肉と比較しても、外食需要が高く、比較的高価格帯の牛肉の影響は深刻である。一方、欧州全域で同じように外出制限が続く中、家庭での調理用のひき肉や低価格帯の部位の需要は高まっている。全体的な需要が主に高級部位を中心に低下する中、低価格帯製品への仕向け量の増加は、肉牛1頭当たりの収益性に悪影響を及ぼすこととなる。
業界関係者によれば、欧州経済は不透明な状況が続くことから、今年前半にさらなる価格下落の可能性もあるとしている。
(注) 参考価格(A/C/Z-R3)とは、EUにおける牛枝肉卸売価格の指標的な価格であり、A=若雄牛(12〜23カ月齢)、C=去勢牛(12カ月齢以上)、Z=若齢牛(8〜11カ月齢)のうち、R=枝肉の格付けが上(6段階評価の上から4番目)、3=脂肪の付着度合が平均的(5段階評価の上から3番目)なものの加重平均価格である。
(参考) 海外情報「英国食肉業界が共同声明、新型コロナウイルスに対する総合的な対応指針など。英国食肉加工協会は畜産物価格への影響を報告」(https://www.alic.go.jp/chosa-cu/joho01b_000044.html、117ページ)を参照されたい。
牛肉生産量、2020年は0.6%減見込み
欧州委員会によると、2019年の牛肉生産量(EU27カ国)は、価格の低迷により生産が抑制されたことなどから、前年比0.9%減の701万6000トン(枝肉重量ベース)となった(図6)。加盟国別にみると、EU内で最大生産国のフランスが同2.2%減、第3位のイタリアが同3.6%減、その他アイルランド、ポーランド、オランダなど主要国の多くで減産となった(表1)。一方、第2位のドイツは乳価低迷などを要因とした未経産牛の淘汰(とうた)などが進み、牛肉生産量が増加した他、スペインは輸出需要の高まりなどから同4.0%増となった。
2020年は、外食産業の閉鎖などのCOVID-19の影響による需要低下を受け、同0.6%減の697万4000トンとさらに減少すると見込まれている。
牛肉輸入量は、アルゼンチン産が増加
欧州委員会によると、2019年の牛肉輸入量は、アルゼンチンからの供給が増え、前年から3.9%増加した(表2)。2020年は、アルゼンチンをはじめとした南米諸国が中国向け輸出の割合を増やしている傾向にあることや、COVID-19による需要減退の影響などにより増加は期待できず、前年並みで推移するとみられている。
一方、2019年の牛肉輸出量は、英国向けが前年比10.0%減少したことにより、全体で同3.0%の減少となった。しかし、アジア(日本、香港、中国、フィリピン)からの需要は引き続き強いとみられ、COVID-19の影響を受けつつも、2020年は同1.0%増と回復が見込まれている。
なお、EU域内の2020年の牛肉消費量は677万7000トンと予測され、前述の生産量および輸出入量を踏まえ、EUの牛肉自給率は前年並みの106%になると見込まれている。
(調査情報部 国際調査グループ)