2月の成牛雌牛と畜頭数、27カ月ぶりに前年同月を下回る
豪州統計局(ABS)によると、2020年2月の成牛と畜頭数は、63万4100頭(前年同月比8.4%減)と6カ月ぶりに前年同月を下回った(図7)。と畜頭数内訳を見ると、雄牛は30万5000頭(同3.7%減)と前年同月をやや下回り、雌牛は32万8800頭(同12.5%減)と前年同月をかなり大きく下回った。雌牛については、2017年12月以降前年同月を上回って推移していたが、27カ月ぶりに前年同月を下回った。と畜頭数全体に占める雌牛の割合は、雌牛と畜頭数が減少したため、51.9%と2カ月連続で低下し、前月より0.8ポイント低下した。雌牛の割合は2019年2月以降最も低くなっているが、依然として過去20年間の平均である48%を上回る水準である。
豪州では、肉牛の主産地であるクイーンズランド州およびニューサウスウェールズ州などを中心として干ばつ状態が続き、飼料や水不足に伴う生産コストの上昇により、生産者が牛を手放し、特に2019年には牛群構築の基盤となる繁殖牛を含めた雌牛を中心にと畜が増加した。しかしながら、1月後半以降、生産地において降雨に恵まれ、牧草の生育が改善に向かったため、生産者が牛を保留し牛群再構築の方向に転換し始めたものとみられる。
2020年2月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、18万6445トン(前年同月比5.7%減)と6カ月ぶりに前年同月を下回った。1頭当たり枝肉重量は、雌牛と畜比率の低下や飼料供給状況の改善などにより294キログラム(同3.0%増)と2カ月連続で前年同月を上回った。
新型コロナウイルス感染症が穀物肥育牛需給に大きな影響を及ぼす見込み
豪州では、干ばつの影響と並んで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が食肉需給に影響を及ぼしてきており、今後の穀物肥育牛需給の不安定要因になるとみられている。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、豪州フィードロット産業は、近年、国内外の需要に加え、干ばつを背景として潤沢に肥育もと牛を導入し飼養頭数を拡大してきた。フィードロット飼養頭数は、直近2カ年間を通じ100万頭を超える頭数を維持し、2019年の穀物肥育牛と畜頭数は300万頭を超え、過去最高を記録した。
しかしながら、COVID-19の拡大に伴い、外食産業での需要が落ち込んでおり、長期肥育牛を中心に穀物肥育牛の需要に大きな影響が及ぶ可能性があるとみている。一方、供給面では、2020年1月以降、市場に出荷される肥育もと牛が減少し、取引価格は高水準の状況にある。さらに飼料穀物価格が依然高水準である。このため、穀物肥育牛経営の環境が悪化する可能性がある。今後は外食需要の回復の時期と程度がカギとなるが、現時点では見通せない状況にあるとしている。
3月の牛肉輸出量、中国向けは2月に続き前年同月を下回る
豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2020年3月の牛肉輸出量は、9万3954トン(前年同月比8.3%減)と、前年同月をかなりの程度下回った(表3)。2020年1月〜3月では前年同期比0.5%増とわずかに前年同期を上回ったものの、増加率は前月より5.5ポイント低下した。
3月の輸出は、豪州国内のと畜頭数減などの影響で全体の輸出量が減少する中、日本向けが増加する一方、その他主要輸出先への輸出量がいずれも減少した。
主要輸出先別に見ると、日本向けは、2万6751トン(同16.1%増)と大幅に増加し、前月に続き最大の輸出先となった。
一方、中国向けは、COVID-19により、外食産業を中心とした需要減少の影響で、1万8328トン(同10.9%減)とかなりの程度減少し、2月に続き前年同月を下回った。
また、米国向けも同様に、COVID-19による、外食産業向けの加工用牛肉を主体とした需要の減退により、1万7183トン(同29.6%減)と大幅な減少となった。
(調査情報部 井田 俊二)