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海外の需給動向【豚肉/中国】  畜産の情報  2020年6月号

豚飼養頭数が回復するも生産量の回復には至らず、輸入量は大幅に増加

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繁殖雌豚、子豚頭数は政府主導のもと継続して増加
 中国農業農村部によると、2020年3月の繁殖雌豚飼養頭数は前月比2.8%増と6カ月連続で増加しており、これは、ASF(アフリカ豚熱)発生後最低となった2019年9月と比べて13.2%の増加となった(図14)。中国国家統計局は、2019年第4四半期末(12月)の繁殖雌豚頭数は前期比95万頭の増加、2020年第1四半期末(3月)は同301万頭の増加と発表している。政府は種豚や繁殖雌豚などの導入を推進しており(注1)、2020年にはフランスとデンマークからこれらの繁殖用豚を輸入した他、海関総署(日本でいう税関)は、フィンランドやチリからも輸入が可能となるよう、優先的に交渉を進めている。
 
 
 また、農業農村部の調査によると、繁殖雌豚の増頭により子豚頭数も6カ月連続で増加しており、特に2020年2月は前月比3.4%増、3月は同7.3%増と勢いが増している。これらの子豚は7月以降に出荷されるため、同時期以降の豚肉生産量も増加していくとされている。
 なお、農業農村部は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、飼料や防疫資材、繁殖雌豚やもと豚などの導入が一時的に制限されたが、影響は限定的であり、増頭傾向を大きく変えるまでには至らなかったとしている。

(注1) 種豚の導入などの豚の増頭対策については、『畜産の情報』2019年12月号「豚肉生産量が減少し、輸入量が大幅に増加」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000871.html)を参照されたい。

豚と畜頭数および豚肉生産量はASFとCOVID-19の影響により大幅に減少
 と畜頭数は、例年、需要期である春節(1月下旬〜2月上旬)に向けて増加し、その後減少する傾向にある。2019年後半は、ASFの影響で前年同期比約45%減と大幅に減少していたが、2020年の春節(1月下旬)に向けて増加傾向に転じていた。しかし、2020年は、肥育豚の供給がまだ回復していなかったこと、COVID-19の影響により一部地域で流通が制限されて出荷が滞ったことや、食肉処理場が稼働停止していたことなどにより、3月のと畜頭数は前年同月比36.9%減の1171万3000頭となった(図15)。
 

 
 また、と畜頭数が減少したことにより豚肉生産量も減少したため、2020年第1四半期は前年同期比29.1%減の1038万トンであった(図16)。
 
 
豚肉輸入量は国内供給不足を受けて大幅に増加
 需要期における国内供給不足を受けて豚肉輸入量は増加し、2020年1〜3月の輸入量は前年の約2.8倍の92万7916トンであった。COVID-19により労働力不足や物流の制限などがある中、海関総署が、入関手続きを簡略化するなど輸入豚肉を国内へ円滑に供給するための措置を実施したため、世界各国からの輸入量が増加した。また、同署によると、特に米国からの輸入については、米中経済貿易協定の第1段階の合意を受け(注2)大幅に増加した。一方、2019年6月から中国向け輸入が停止されていたカナダについては(注3)、他国と比べて増加率は低いものの、輸入が再開した2019年11月以降継続して増加している(表11)。
 
 
 米国からの豚肉輸入については、中国政府に申請し、承認を得た輸入企業は、2020年3月2日以降は追加関税が免除される(注4)。このため、今後も米国からの輸入は増加すると考えられる。

(注2) 米中経済貿易協定の第1段階の合意については、海外情報「米中経済貿易協定の第1段階の合意と農業団体の声明(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002600.html)を参照されたい。
(注3) 中国向けカナダ産豚肉をめぐる経緯については、『畜産の情報』2020年2月号「1〜10月の豚肉輸出量、中国向けが大幅に変動」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000954.html)を参照されたい。
(注4) 米国からの輸入関税については、海外情報「多品目の米国産農産品の追加関税の免除を公表(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002635.html)を参照されたい。


豚肉小売価格は春節需要とCOVID-19の影響を受け高騰
 増頭対策などにより2019年12月にはわずかに需給が緩和していたものの、春節需要や、COVID-19により一時的に流通が制限されていたことなどにより、豚肉小売価格は2020年2月には1キログラム当たり58.9元(907円:1元=15.4円)と、前年同月比約2.6倍の大幅な上昇となった(図17)。その後、需要期を過ぎ、COVID-19の影響も緩和されたことから、4月は同53.9元(830円)となっている。
 豚肉価格の高騰により増産の機運が高まっていることから、豚飼養頭数の増加に合わせる形で子豚価格も高騰が持続し、4月は、前年同月比159%高(約2.6倍)の1キログラム当たり98元(1509円)となった。
 
 
(調査情報部 寺西 梨衣)