3月の生乳生産量は、前年同月比1.9%減
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2020年3月の生乳生産量は、168万0000トン(前年同月比1.9%減)と、北島を中心とした干ばつの深刻化などから、前年同月をかなりの程度下回る見通しであったが、わずかな減少にとどまった(図22)。3月末に降雨があったものの、主産地であるオークランドやノースランドなど北島には十分な降雨量が無かった。このため、4月以降も干ばつが続く予測となっていることなどから今後の生乳生産への影響が懸念される。2019/20年度(6月〜翌5月)の3月までの累計においても、1950万4000トン(前年同期比0.6%減)とわずかな減少となった。
乳製品国際価格は、チーズを除き3品目が下落
2020年4月21日に開催された、乳製品の国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション。月2回開催)の主要4品目の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表15、図23)。前回開催(同年4月7日)時との比較では、チーズの価格はわずかに上昇しているものの、脱脂粉乳、全粉乳、バターの価格はいずれも下落した。
脱脂粉乳の価格は、2019年6月からゆるやかに上昇が続いたが、2020年1月以降は下落傾向で推移し、前回比5.3%安の1トン当たり2380米ドル(25万7040円:1米ドル=108円)となり、前年同月比では3.3%安となった。
全粉乳は、中国を始めとするアジアを中心に需要が低迷していることから、前回比4.0%安の同2707米ドル(29万2356円)と引き続き下落した。
バターは、前回比3.4%安の同4117米ドル(44万4636円)と下落し、高値であった前年同月の水準と比べると、25.7%安の水準となっている。
一方チーズは、前回比1.9%高の同4480米ドル(48万3840円)とわずかに上昇した。
以上のように4月の国際取引価格は、チーズおよび乳糖は上昇したが、そのほかすべての品目で下落となった。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、世界経済の悪化から買い手の不安感などが高まったことなどによるものと見られている。一方、重要な輸入国である中国は武漢市の封鎖が解除され、需要は徐々に回復基調となっていることなどから、今後の動向に注視していく必要がある。
深刻化する干ばつ被害地域に最大200万NZドルの援助
ニュージーランド政府は3月12日、特定の干ばつが深刻な地域に対し、2021年6月までの間、農家を支援するため、最大200万NZドル(1億3480万円:1NZドル=67.4円)の政府資金を拠出すると発表した(対象地域は、干ばつ地域と認定されている北島全体・南島の一部(タスマン、マールボロ、カイコウラ)・北カンタベリー・チャタム諸島)。
この200万NZドルの政策パッケージプランには、農家への直接的な資金援助は含まれていないものの、コーディネーターや専門家の拡充などが組み込まれており、生産の現場で直面する課題解決体制を整えるための費用に充てられる。
(調査情報部 廣田 李花子)