米国内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中、米国農務省(USDA)によると、2020年4月の乳製品の国内需要は、景気悪化に加え、外食から家庭での消費にシフトしたものの外食での落ち込みを補えなかったことから、低調となった。この結果、4月の乳製品在庫は前月から増加し、各品目の卸売価格は大きく低下した。なお、5月には、乳価の低下などによる生乳減産の動きや、一部飲食店の段階的な営業再開などにより、4月と比べて乳製品需給に改善傾向が見られているとしている。
チーズ卸売価格、前年同月比23.4%安
USDAが公表している「Dairy Market News」によると、2020年4月のチーズの卸売価格は、1ポンド当たり1.50米ドル(1キログラム当たり360円:1米ドル=109円)と前月比28.1%安、前年同月比23.4%安と大幅に下落し、15カ月ぶりに前年同月を下回った(図16)。近年、チーズの卸売価格は、米国内外の好調な需要を背景に堅調に推移してきたものの、ピザなどの外食消費の急減などにより、4月の在庫が増加したことから、大幅に低下した。
バター卸売価格、前年同月比47.0%安
2020年4月のバターの卸売価格は、1ポンド当たり1.20米ドル(1キログラム当たり288円)と前月比30.4%安、前年同月比47.0%安と大幅に下落し、9カ月連続で前年同月を下回った(図17)。バターの卸売価格は2019年後半以降、生産量の増加を背景に軟調傾向で推移する中、チーズなど他の乳製品と同様、外食消費の急減などにより、4月の在庫が増加したことから、大幅に低下した。
脱脂粉乳卸売価格、前年同月比9.0%安
2020年4月の脱脂粉乳の卸売価格は、1ポンド当たり0.90米ドル(1キログラム当たり216円)と前月比17.0%安、前年同月比9.0%安と下落し、20カ月ぶりに前年同月を下回った(図18)。脱脂粉乳の卸売価格は近年、米国内外の好調な需要を背景に、堅調に推移してきたものの、4月は他の乳製品と同様、大幅に低下した。
4月のクラスU〜W乳価も大きく低下
乳製品の卸売価格の下落に伴い、連邦生乳マーケティング・オーダー(FMMO)
(注)においてクラスU〜Wに区分される加工向け乳価も低下している。2020年4月の乳価をクラス別に見ると、クラスU(クリーム、アイスクリーム、ヨーグルトなど向け)は100ポンド当たり13.87米ドル(1キログラム当たり33円)(前年同月比15.3%安)、クラスV(チーズ、ホエイ向け)は同13.07米ドル(同31円)(同18.1%安)、クラスW(バター、脱脂粉乳向け)は同11.4米ドル(同27円)(同27.5%安)といずれも前年同月を大きく下回った(図19)。
(注) 生乳取引地域(オーダー)内で取引される生乳について、4分類(一つが飲用向け、三つが加工向け)の用途別に最低取引価格を設定するとともに、生乳取引業者に対して生産者へのプール乳価支払いを義務付けている制度。
生乳生産量、10カ月連続で前年同月を上回る
USDAが公表している「Milk Production」によると、4月の生乳生産量は848万2000トン(前年同月比1.4%増)と10カ月連続で前年同月を上回った(図20)。生乳生産量は、乳用経産牛の飼養頭数および1頭当たりの乳量の増加を背景に増加傾向で推移してきたが、今後は、今回の乳価の低下などによりどの程度の影響を受けるのか注視が必要である。
(調査情報部 河村 侑紀)