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国内の需給動向【牛乳・乳製品】 畜産の情報 2020年8月号

緊急事態宣言下の生乳生産は堅調も乳製品需給は引き続き異例の動き

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5月の北海道の生乳生産量は過去最高水準
 令和2年5月の生乳生産量は、65万7203トン(前年同月比2.0%増)となり、元年9月以降、9カ月連続で前年同月を上回った(図20)。
 
 
 地域別に見ると、北海道は、5月としては過去最高の水準となる36万1005トン(同2.7%増)となった(農林水産省「牛乳乳製品統計」)。ホクレン農業協同組合連合会によると、5月の道内生乳受託乳量(速報値)のうち、域内最大の生産量を誇る帯広地区は10万9535トンと前年同月を2.5%上回り、2位の中標津地区と3位の北見地区も、それぞれ7万2338トン(同3.4%増)、5万2025トン(同3.0%増)と前年同月を上回った。
 また、都府県も、29万6198トン(同1.2%増)と前年同月をわずかに上回った。この中で、関東、東山、九州の3地域は、4月の時点では前年同月を下回っていたが、5月に入り前年同月を上回った。加えて、増加幅が最も大きい中国地域は2万7656トン(同7.6%増)と11カ月連続で前年同月を上回って推移している。

5月の乳製品向け処理量は前年同月比8.8%増
 5月の用途別処理量を見ると、5月25日までに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う緊急事態宣言が全国で解除されたが、学校給食用牛乳の供給停止などの影響から、牛乳等向けが33万5112トン(前年同月比3.7%減)と前年同月をやや下回った一方で、乳製品向けは31万8482トン(同8.8%増)と前年同月をかなりの程度上回った。
 乳製品向けの中では、脱脂粉乳・バター等向けが17万3205トン(同18.2%増)と前年同月を大幅に上回った。チーズ向けも4万3829トン(同15.8%増)と3カ月連続して前年同月を上回り、いずれも増加傾向で推移している(農林水産省「牛乳乳製品統計」、農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。

緊急事態宣言下の牛乳の消費は堅調に推移
 5月の牛乳生産量は、学校給食用および業務用の大幅な減少に伴い、25万7500キロリットル(前年同月比6.7%減)と前年同月をかなりの程度下回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」)。家庭内消費の指標となる牛乳の販売量(一般社団法人Jミルク調査)を見ると、前年同期を上回って推移している(図21)。この背景には、緊急事態宣言下の「巣ごもり需要」に加え、農林水産省が4月21日から実施しているプラスワンプロジェクト(注1)などの関係機関による消費促進の取り組みの成果があったものとみられる。
 

(注1) 緊急事態宣言の対象地域拡大によって学校給食や外食産業における牛乳・乳製品消費のさらなる減少が懸念される中、酪農家を支えるために、牛乳やヨーグルトを普段より1本多く消費することを推進する取り組み。
 
脱脂粉乳在庫に対する各種取り組み
 緊急事態宣言が5月下旬まで続く中、業務用需要の減少に伴い、乳製品在庫は引き続き高い水準で推移した(注2)。中でも脱脂粉乳の5月の期末在庫量は8万5979トン(前年同月比21.5%増)と、前年同月を大幅に上回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」)。
 こうした動きに対処するため、当機構では、農林水産省の要請に基づき、脱脂粉乳等から飼料用等への用途変更を支援する生乳需給改善促進事業をはじめ、各種の緊急対策を実施している。
 また、前述の農林水産省によるプラスワンプロジェクトは、6月19日よりセカンドステージに移行し、今後はアイスクリームやヨーグルトといった、脱脂粉乳を使用している乳製品を中心に、消費を積極的に推進していくとしている(注3)
 本プロジェクトをはじめとする酪農乳業界を挙げての取り組みと、消費者の協力に支えられながら、関係者による懸命な余剰乳の調整・処理が行われた結果、生乳生産量のピークとなる6月を過ぎるまでの間、生乳廃棄という事態は回避されているところである。

(注2) 緊急事態宣言が発令された4月の乳製品需給動向については、『畜産の情報』2020年7月号「需給情勢が大きく変化する中、2年度の生乳生産量は微増の見込み」を参照されたい。(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001212.html
(注3) 「日本の酪農を応援する『プラスワンプロジェクト』セカンドステージへ!」(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/lin/plusone_project2nd.html)を参照されたい。

 
(酪農乳業部 鈴木 香椰)