欧州地域は、北米地域と並ぶ大きな有機食品市場を形成している。ドイツ、フランスの有機食品市場は米国に続く世界第2位、第3位の規模であり、小売販売額はそれぞれ109億1000万ユーロ、91億3900万ユーロである。また、フランスは市場の成長も著しく、2018年の対前年比成長率は15%であった。その他、スイス、デンマーク、ルクセンブルク、アイルランドも10%を超える成長を続けている。
畜産物の消費は、各国の農業構造や食文化を反映するので一様ではないが、鶏卵は多くの国で最も有機比率の高い品目となっている。FiBL & IFOAM(2020)によれば、デンマークでは32.6%、フランスでは29.6%、スイスでも26.6%の鶏卵が「有機」として販売されている。また、牛乳・乳製品も有機比率の高い品目である。オーストリアでは牛乳の23.2%、ヨーグルトの21.9%、スイスでは牛乳の16.7%、乳製品の12.9%、デンマークではバターの16.6%、フランスでは牛乳の12.7%が「有機」として販売されている。より「ローカル」志向の強い養鶏(卵)、酪農部門は先んじて有機生産への転換が進んでいるのである。
なお近年、欧州・北米諸国ではベジタリアン、ヴィーガン(絶対菜食主義)の消費人口が増えている。これは有機食品を志向する消費者の間に顕著なトレンドで、動物性食品に代替する食品(Plant-based)の製品開発も進んでいる。この点は、有機畜産物の消費に今後何らかの影響を及ぼすと考えられるので、注視しておきたい点である。