繁殖雌豚頭数はASF発生後初めて前年同月より増加
中国農業農村部によると、2020年6月末時点の繁殖雌豚頭数は、前年同月から549万頭増の3629万頭となり、2018年8月のASF(アフリカ豚熱)発生後初めて前年同月を上回った(図12)。また、総飼養頭数は2019年末と比べて2929万頭増の3億4000万頭と、前年同期に迫る水準まで増加している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により一部地域において一時的に物流が制限されていたものの、飼料などの生産資材が滞りなく流通されたことにより、影響は限定的であった。
豚肉生産量は回復の兆し
2020年6月のと畜頭数は前年同月比24.5%減の1327万頭であった(図13)。繁殖雌豚頭数が回復基調となった(図12)2019年下半期に導入された繁殖雌豚から生産された子豚は、2020年7〜8月頃に出荷され始めると言われている。従って、2020年下半期は、2018年と同水準まで回復する可能性がある。
また、2020年上半期の豚肉生産量は前年同期比19.9%減の1998万トンとなった(図14)。2020年第1四半期は2016〜18年同期平均比30.4%減であったものの、2020年第2四半期は同7.2%減となっており、回復の兆しが見えてきていると言える。
豚肉価格および子豚価格は高値で推移
2020年に入りCOVID-19により外食や学食などの消費が減少したため、春節休暇(1月下旬〜2月上旬)後の豚肉価格は下降傾向で推移していた。その後、外出制限の緩和などを受け、工場や学校の再開により消費が回復したことで、6月には上昇に転じ、7月の豚肉価格は1キログラム当たり52.3元(800円:1元=15.3円)と、前年同月比約1.9倍の高値で推移している(図15)。
また、依然として豚肉価格の高止まりを背景に豚肉増産の機運が高まっていることから、子豚価格は高値を更新し、7月は前年同月比約2.4倍の同101.5元(1533円)となり、豚肉価格との
乖離が顕著となっている。
豚肉輸入量は大幅に増加も今後は減速か
豚肉輸入量は引き続き増加し、2020年1〜5月の輸入量は前年同期比約2.6倍の168万2994トンであった(表4)。輸入先別では、米国はCOVID-19により一時的に業務を停止している食肉処理場があるにもかかわらず、米中経済貿易協定の第1段階の合意があった
(注)ことを背景に、前年同期比で約6倍強とスペインやドイツを上回る量となったほか、多くの国で大幅に輸入量が増加した。
なお、中国はASFやCOVID-19による国内供給不足を受けて豚肉輸入量が増加していたが、現地専門家によるとすでに輸入過多という情報もあり、6月以降は増加の勢いが減速するとの分析もある。また、依然として欧州やブラジルではCOVID-19の感染が発生した食肉処理場からの中国への輸出を停止していることに加え、中国政府は7月23日に、食肉加工工場などに対し、輸入食肉を使用する際にあらかじめ「PCR検査合格証明書」の取得を義務付けるなどの措置を含むガイドラインを発表した。これらの制約要因を踏まえると、今後もこのままの勢いで輸入が継続することは考えにくい状況にあると言える。
(注) 米中経済貿易協定の第1段階の合意については、海外情報「米中経済貿易協定の第1段階の合意と農業団体の声明(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002600.html)を参照されたい。
(調査情報部 寺西 梨衣)