鶏肉価格は一時的に下落するも、回復
2019年はアジアの多くの国でASF(アフリカ豚熱)が発生し、豚肉の供給不足に陥ったことから、鶏肉の代替消費が増加し、鶏肉の主要輸出国であるタイの国内鶏肉価格が上昇していた。
2020年上半期は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により県をまたぐ移動が禁止されるなど、国内の流通が制限されたものの、鶏肉を含む食料の供給が滞らないよう関係車両の通行は許可されていたため、鶏肉生産量に大きな影響はなかった。一方で、外出制限による外食消費の減退などを受け、鶏肉価格は一時的に下落していたが、外出制限が緩和された5月中旬以降上昇に転じ、6月には前年同月比2.2%安の1キログラム当たり47.6バーツ(163円、1バーツ=3.42円)となった(図16)。
このように、COVID-19の影響も限定的であったことから、今後も高値で推移すると考えられる。
冷凍鶏肉輸出が大幅に増加も各国への輸出量は変動
2020年1〜5月の冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比13.9%増の13万8305トンであった(表5)。
日本向け輸出は5万2292トンと同18.4%増であったが、これは2019年上半期の輸出量が例年より2割程度少なかったことによる。また、ASFにより消費が豚肉から鶏肉にシフトし、COVID-19の拡大に伴う交通制限や食肉処理場の営業停止などにより鶏肉の国内供給が一時的に制限されていた中国への輸出が大幅に増加した。しかし、中国では鶏肉が増産され、鶏肉価格が需要増加前と同水準まで下降しており、国内供給がある程度充足されていると考えられるため、今後の中国向け輸出の勢いは衰えていくと考えられる。
一方、マレーシア向け輸出は大幅に減少した。5月時点のタイの現地報道によると、COVID-19によりマレーシアが税関を閉鎖したことによるものとされている。また、主にマレーシアから鶏肉を輸入していたシンガポールは、輸入先をタイに切り替えており、依然として引き合いがあることから、今後もシンガポール向け輸出は増えるとしている。
鶏肉調製品輸出は外食需要の影響を受け減少
2020年1〜5月の鶏肉調製品輸出量は、前年同期比3.7%減の23万1900トンであった(表6)。COVID-19により各国で外食需要が落ち込んだため輸出合計数量は減少したが、日本向け輸出は増加した。これは、日本では、巣ごもり需要により、家庭用冷凍食品として仕向けられることが多いタイ産鶏肉調製品の消費が一定程度あったことに加え、主要輸出先である欧州や韓国向けの輸出から日本向け輸出への切り替えが進んだためであると考えられる。
(調査情報部 寺西 梨衣)