6月の生乳生産量、一時的な落ち込みから回復へ
米国農務省(USDA)が7月21日に公表した「Milk Production」によると、6月の生乳生産量は前年同月比0.5%増の830万4000トンとなり、前年を上回った(図17)。
米国の生乳生産量は、搾乳牛(乳用経産牛)頭数および1頭当たりの乳量の増加を背景に、2020年4月まで10カ月連続で前年を上回っていたが、5月は同0.5%減と、11カ月ぶりの減産に転じていた。
チーズの卸売価格、急激に上昇
USDAが公表している「Dairy Market News」によると、2020年6月のチーズの卸売価格は、前月比56.9%高、前年同月比33.6%高の1ポンド当たり2.73米ドル(1キログラム当たり637円:1米ドル=106円)と大幅に上昇した(図18)。
チーズの卸売価格は近年、米国内外の好調な需要を背景に堅調に推移してきたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中、ピザなどの外食消費が急減し、家庭消費にシフトしたものの外食での落ち込みを補えなかったことから、4月は15カ月ぶりに前年同月を下回り、5月も安値であった。しかし、後述の通り乳製品需給をめぐる市場環境の好転により、6月に入ると急激な上昇に転ずることとなった。
バター、脱脂粉乳の卸売価格、緩やかに回復へ
2020年6月のバターの卸売価格は、前年同月比23.4%安の1ポンド当たり1.83米ドル(1キログラム当たり427円)と11カ月連続して前年を下回ったものの、前月比では24.3%高となり、回復の兆しを見せた(図19)。
脱脂粉乳についても、前年同月比5.3%安の1ポンド当たり0.99米ドル(1キログラム当たり232円)と3カ月連続で前年を下回ったものの、前月比では12.4%高となり、前年の水準に迫る結果となった(図20)。
需給バランスは改善へ
こうした状況について、USDAおよび米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、米国での乳製品消費量は家庭よりも外食の方が多いため、COVID-19の拡大により4月以降の乳製品消費量が減少し、さらに、物流面での混乱により、生乳が処理できず農地への廃棄などが生じた。
また、協同組合をはじめとする乳業メーカーの供給過剰抑制措置(乳価の引き下げ。図21)などもあり、酪農家は、給餌量の調整による1頭当たりの乳量の抑制、搾乳回数の削減、搾乳牛の早期乾乳などを行った結果、1頭当たりの乳量がピークを迎える5月にあっても、生乳生産量は減少したとしている。
しかしその後、全米各地で経済活動が緩やかに再開され、外食産業での需要が増加したこと、米国政府のコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP)による食品買上げ配給プログラム
(注)が実施されたこと、5月の乳製品輸出が好調であったことなど需要面での状況が改善したことから、乳製品の卸売価格は回復し、6月の生乳生産量も再び増加に転じたとのことである。
なお、USDECは、COVID-19による生乳需給の緩和に対応するため、酪農家は給餌量を調整し、1頭当たりの乳量を抑制したため一時的に減産となったものの、搾乳牛頭数は減少していないことを踏まえると、需要を満たすだけの供給量を確保するために増産へ切り替えることは可能な状況にあるとしている。
(注) 詳細は、海外情報「米国農務省、新型コロナウイルス感染症に対する農業支援策を発表(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002685.html)、海外情報「米国農務省は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている生産者への支援策の詳細を発表(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002709.html)を参照されたい。
(調査情報部 藤原 琢也)