令和2年8月の鶏卵卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり145円(前年同月比5円安)と前年同月を下回った(図20)。また、直近5カ年の8月の同価格を見ると、本年は最も低い水準となっている。
本年の同価格は年明けに下落した後は上伸し、4月上〜中旬には同210円となった。その後は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により業務・加工用需要が減少する中、下落傾向で推移していたが、8月は全日145円となった。
このような中、5月に発動した成鶏更新・空舎延長事業
(注1)は引き続き発動が続いている。標準取引価格(日ごと)
(注2)は5月18日に同160円となり、令和2年度の安定基準価格(同161円)を下回った以降、7月27日には同149円まで下落した。8月末には同152円まで上昇したものの、依然、同事業の発動基準である安定基準価格を下回っている。
COVID-19緊急事態宣言解除後も、業務・加工用需要が十分に回復していないなど、引き続き需給が緩和状態にある中、同事業を実施する一般社団法人日本養鶏協会は7月27日付けで、同協会の会員に対し、需要に見合った生産に取り組むことを呼びかける通知を発出した。同事業の参加羽数がどの程度となるのかが注目される。
一方、一般社団法人日本種鶏
孵卵協会の調査によると、令和元年12月以降、7カ月連続で前年同月水準を上回って推移していた採卵用めすの出荷・え付け羽数は、7月については前年同月並み(同0.2%増)となり、令和元年12月以降で最も小さい増加率となった(図21)。なお、令和2年1〜7月の合計は、前年同期比5.0%増となっている。
今後について、供給面では、自主的な誘導換羽が進められたと言われているほか、需要および価格の低迷が続いていることから早期
淘汰の動きが活発化しているとも言われており、今後の生産動向が注目される。需要面では、COVID-19の影響により外食需要の低迷が続くと予想されることから需要の大きな回復は見込めないとみられる中、秋に向かい、大手外食チェーンのプロモーションやおでんといった季節商品による需要の増加が期待される。
(注1) 鶏卵生産者経営安定対策事業の一つであり、一般社団法人日本養鶏協会が実施する事業。同事業は、鶏卵の標準取引価格(日ごと)が安定基準価格を下回った日の30日前から標準取引価格(日ごと)が安定基準価格を上回る日の前日までに、更新のために成鶏を出荷し、その後60日以上の空舎期間を設けた生産者に対して奨励金を交付するものである。なお、安定基準価格を上回った日の前日までに、成鶏の処理を食鳥処理場に申し込んでいる場合は、安定基準価格を上回った日から起算して30日後までに、更新のために成鶏を出荷し、その後60日以上の空舎期間を設けた生産者に対して奨励金を交付するものである。
(注2) JA全農たまご株式会社の東日本営業本部および西日本営業本部において販売された規格卵(鶏卵規格取引要綱(昭和46年6月1日付け46畜A第2947号農林事務次官依命通知)別紙の箱詰鶏卵規格およびパック詰鶏卵規格に定める全種類の鶏卵)の1キログラム当たりの加重平均価格(円未満切捨て)として日ごとに算定し、一般社団法人日本養鶏協会が毎日公表しているもの。ただし、加重平均に当たっては前年度の規格別販売数量割合が用いられている。
2年1〜7月の鶏卵輸入量は、前年同期をやや下回る
近年、鶏卵(ふ化用除く)の輸入量は、国内消費量の5%程度で推移しており、そのうち保存性や輸送コストなどに優れる加工原料用の粉卵が輸入量全体の約9割を占めている。
鶏卵の輸入量は、対前年同月で見ると、月によって増減幅が大きくなっている。令和2年1〜7月の輸入量(殻付き換算ベース)は、6万4430トン(前年同期比5.7%減)となり前年同期をやや下回った(図22)。
(畜産振興部 前田 絵梨)