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海外の需給動向【牛肉/カナダ】 畜産の情報 2020年10月号

大麦価格高や肥育牛価格安でフィードロットの損失続く

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大麦価格高で米国産トウモロコシの輸入量増加

 カナダ肉用牛生産者協会(CCA)の市況分析部門であるCanFaxによると、フィードロットは、2017年9月以降、多くの月で損失が出ている(図4)。麦類の生産が盛んなカナダ西部では大麦を中心とした飼料穀物が給与されており、フィードロットの損失が続いているのは、近年の大麦価格が高値で推移していることなどが要因とされている。直近では、米国と同様、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響による食肉処理場の稼働率低下などで肥育牛価格が軟調に推移していることから、5月のマイナス幅が大きくなった。

 
 大麦価格は、干ばつなどの天候不順や中国向けなどの好調な輸出需要を背景に、2017年後半から上昇基調で推移し、2019年6月下旬から7月上旬をピークにやや落ち着いたものの、依然として高水準で推移している(図5)。こうした状況の中、フィードロットでは、飼料費を抑えるために、飼料の一部を相対的に安価となった米国産トウモロコシで代替する動きもあることから、同国からのトウモロコシの輸入量は増加傾向となっている(図6)。なお、カナダは、家畜の飼料用などに利用されるイエローデントコーンのほぼ全量を米国から輸入している。
 
 

 

牛と畜頭数、前年並みに回復

 カナダ牛肉格付協会(CBGA)によると、週別と畜頭数は、アルバータ州の大手食肉パッカーなど食肉処理場の従業員がCOVID‐19に感染した影響で稼働率が一時大きく落ち込んだことから、最大の減少幅となった4月下旬(第17、18週)には前年同期比で約6割減少した(図7)。その後、稼働率の回復に伴い、6月中旬(第25週)にはと畜頭数も前年並みの水準まで回復している。

 

牛枝肉重量、前年並みに戻る

 CBGAによると、と畜頭数が一時大きく落ち込み、フィードロットでの出荷遅延が発生したことから、4月下旬(第17、18週)以降、牛1頭当たりの枝肉重量は前年同期を大きく上回って推移したものの、6月中旬(第25週)には前年並みの水準まで回復しており、フィードロットでの出荷遅延は解消に向かっている(図8)。一方、7月時点において、米国の枝肉重量は依然として前年を大きく上回っていることから、カナダよりも出荷遅延の影響が長引いているとみられる。

 
(調査情報部 河村 侑紀)