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国内の需給動向【牛乳・乳製品】 畜産の情報 2020年11月号

生乳生産は堅調に推移、令和2年度のバター輸入枠は6000トン削減

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生乳生産量12カ月連続で前年同月を上回る
 令和2年8月の生乳生産量は、北海道が35万880トン(前年同月比2.9%増)、都府県が25万6484トン(同0.7%増)と、いずれも前年同月を上回った。このため、全国では60万7364トンとなり、猛暑により都府県を中心に生乳生産が一時的に落ち込んだ前年同月を2.0%上回った。生乳生産量は、元年9月以降12カ月連続で前年同月を上回り、堅調に推移している(図29、農林水産省「牛乳乳製品統計」)。
 

 
 また、2年8月の用途別生乳処理量を仕向け先別に見ると、牛乳等向けが34万5180トン(同4.1%増)と前年同月をやや上回った。一方、乳製品向けは、チーズ向けと脱脂粉乳・バター等向けがそれぞれ同1.9%増、同5.0%増と前年同月を上回ったが、クリーム等向け(注)が同5.8%減と前年同月を下回ったことから、全体としては25万8428トン(同0.7%減)と前年同月をわずかに下回った(農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。

(注) クリーム向け、脱脂濃縮乳向けおよび濃縮乳向けの合計。

市乳化率は6月以降前年同月を上回って推移
 生乳生産量に占める牛乳等向け処理量の割合を表す市乳化率は、本年3月以降、例年と異なる動きを見せている(図30)。新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響で、業務用および学校給食用の牛乳需要が減少したことにより、本年3月以降、前年同月を2ポイント以上下回って推移していたが、6月以降は、学校給食用牛乳の供給再開と夏休みの短縮による供給増や、業務用牛乳需要が回復傾向となったことにより一転し、7月からは2カ月連続で前年同月を上回って推移している。


 
8月の学校給食用牛乳生産量は、前年同月比172.7%増
 8月の牛乳生産量は、27万3763キロリットル(前年同月比6.9%増)と前年同月をかなりの程度上回った。これを区分別に見ると、学校給食用は、前述の通り夏休みの短縮により1万6019キロリットル(同172.7%増)と前年同月を大幅に上回った。一方、回復傾向にある業務用は、前月より増加したものの2万3370キロリットルと前年同月を約1割下回る水準となった。
 こうした中、家庭内消費を主とする直接飲用牛乳は、23万4374キロリットル(同4.6%増)と前年同月をやや上回り、引き続き堅調に推移している(図31)。
 

 
令和2年度の生乳生産量は、前年度比1.1%増の見込み
 一般社団法人Jミルクは9月25日、「2020年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと課題について」を公表した。これによると、令和2年度の生乳生産量は744万1000トン(前年度比1.1%増)と、2年連続の増加を見込んでいる。地域別に見ると、北海道では418万3000トン(同2.2%増)、都府県では生乳生産量は325万8000トン(同0.4%減)としている(表4)。

 
 生乳の用途別処理量については、飲用等向けが410万3000トン(同0.7%増)、乳製品向けが329万3000トン(同1.6%増)と、いずれも増加し、うち脱脂粉乳・バター等向けは167万8000トン(同5.2%増)と、前年度をやや上回る見通しとなっている。
 こうした中で、バターについては、業務用需要の落ち込みから、年度末在庫量は3万5300トン(同22.8%増)と高水準と見込まれ、また脱脂粉乳の在庫についても、現在の高い水準が維持され、年度末には8万8200トン(同15.7%増)となる見通しとなっている。

農林水産省、令和2年度のバター輸入枠数量を引き下げ
 以上のようなJミルクの需給見通しに基づき、農林水産省は9月25日、令和2年度の指定乳製品等の輸入枠数量の検証結果を発表した。
 本年1月に2万トンと示されていたバターについては、家庭用の欠品が解消したことを踏まえ、高水準となっている在庫数量を適正化するため、COVID‐19の影響による生産増加量と消費減少量を合わせた6000トンを削減し、1万4000トンに見直した。年度途中にバターの輸入枠が引き下げられるのは、輸入枠数量が年に2回検証されるようになった平成29年度以降、初めてのことである。
 一方、脱脂粉乳については、すでに5月の検証時に日米貿易協定に基づく750トンに引き下げていることから、今回の検証では同数量で据え置かれた。

(酪農乳業部 鈴木 香椰)