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国内の需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2020年11月号

鶏卵卸売価格は上昇も、前年同月比安

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 令和2年9月の鶏卵卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり153円(前年同月比26円安)と前年同月を下回った。(図32)。
 

 
 本年の同価格は年明けに下落した後は上伸し、4月上〜中旬には同210円となった。その後は、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響による業務・加工用需要の減少のため、例年より低い水準で推移している。鶏卵相場は、例年、不需要期の夏場に低下し、気温の低下とともに最需要期の12月に向けて上昇する傾向にある。9月の同価格は、直近5カ年の9月の同価格を見ると最も低い水準となっているものの、気温の低下とともに上昇するという例年の動向と同様、前月比では8円高となった。
 このような中、一般社団法人日本養鶏協会は、令和2年9月24 日の鶏卵の標準取引価格(日ごと)(注)が同166円となり、成鶏更新・空舎延長事業(後述)の発動基準である安定基準価格(同161円)を上回ったことから、同事業の対象となる成鶏の出荷期間が9月23日をもって終了したことを発表した。同事業の生産調整により今後の生産量の減少が予想される一方で、一般社団法人日本種鶏卵協会の調査によると、採卵用めすの出荷・え付け羽数は、8月分は前年同月比4.2%増となり、元年12月以降前年同月を上回って推移している。なお、2年1〜8月の合計は、前年同期比4.9%増となっている。
 今後について、供給面では、成鶏更新・空舎延長事業や自主的な誘導換羽といった生産調整の取り組みの影響が見込まれる一方、気温低下による卵重の回復も見込まれており、今後の生産動向が注目される。需要面では、業務用の荷動きは引き続き低調であるなどCOVID‐19の影響は続いており、例年並みの水準までの回復は見込めないとみられる中、おでんやすき焼きなどの季節需要の増加や 「Go To Eatキャンペーン」の実施などによる消費促進が期待される。

(注)JA全農たまご株式会社の東日本営業本部および西日本営業本部において販売された規格卵(鶏卵規格取引要綱(昭和46年6月1日付け46畜A第2947号農林事務次官依命通知)別紙の箱詰鶏卵規格およびパック詰鶏卵規格に定める全種類の鶏卵)の1キログラム当たりの加重平均価格(円未満切捨て)として日ごとに算定し、一般社団法人日本養鶏協会が毎日公表しているもの。ただし、加重平均に当たっては前年度の規格別販売数量割合が用いられている。

成鶏更新・空舎延長事業が終了
 一般社団法人日本養鶏協会は、令和2年5月18日から発動が続いていた成鶏更新・空舎延長事業の対象となる成鶏の出荷期間が9月23日をもって終了したと発表した。
 同事業は、同協会が実施する鶏卵生産者経営安定対策事業の一つである。同事業は、鶏卵の標準取引価格(日ごと)が安定基準価格を下回った日の30日前から標準取引価格(日ごと)が安定基準価格を上回る日の前日までに、更新のために成鶏を出荷し、その後60日以上の空舎期間を設けた生産者に対して奨励金を交付するものである。なお、安定基準価格を上回った日の前日までに、食鳥処理を出荷計画申込書により食鳥処理場に申し込んでいる成鶏についても、安定基準価格を上回った日(9月24日)から起算して 30日後(10月23日)までに食鳥処理場にて食鳥処理されていることを条件に、事業の対象となる。
 同協会の公表によると、9月30日時点の交付件数は349件、成鶏の出荷羽数は578万5885羽、処理羽数は573万8805羽となっている(表5)。
 

(畜産振興部 前田 絵梨)