6月の豚肉生産量は、前年同月比でかなりの程度増加
欧州委員会によると、2020年6月の豚肉生産量(EU27カ国)は、前年同月比8.1%増の184万3000トンとなった(図9)。3カ月ぶりに前年同月を上回ったものの、同年1〜6月の累計では、1131万トン(前年同期比0.9%減)となった。6月のと畜頭数は前年同月比7.4%増の1968万頭、1頭当たり枝肉重量は同0.7%増の93.7キログラムとなった。
6月の主要生産国の豚肉生産量を見ると、スペイン(前年同月比18.0%増)、ドイツ(同1.5%増)、フランス(同12.1%増)、ポーランド(同5.9%増)、オランダ(同6.9%増)、デンマーク(同4.8%増)では増産となったものの、イタリアは同9.2%減と唯一の減産となった(表6)。
ドイツの豚枝肉卸売価格下落
欧州委員会によると、8月のドイツの豚枝肉卸売価格は、前月比2.5%安の100キログラム当たり152.3ユーロ(1万9190円:1ユーロ=126円)となり、月平均では2カ月連続で前月比安となった。
価格動向を週ごとに見ると、7月13日の週に151.91ユーロ(1万9141円)まで下落したものの、その後は、152ユーロ前後で推移していた。しかし、9月14日の週に前週比10.1%安の132.9ユーロ(1万6745円)と再び下落し、9月21日の週は、同0.2%安の132.6ユーロ(1万6708円)となった(図10)。
EUでは、9月10日にドイツで野生イノシシから初めてASF(アフリカ豚熱)が確認された
(注)。10月14日現在、同国では、飼養豚での発生は確認されていないものの、野生イノシシでの発生件数は、69件まで増えている。ドイツはEU最大の豚肉生産国であり、生産量の約12%をEU域外に輸出しているが、ASFの発生を受けて、輸出が好調であった中国などがドイツ産豚肉の一時輸入停止措置を講じている。そのため、ドイツ国内での新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の感染拡大懸念による買いだめ需要の沈静化を受けて低下していた同価格は、EU域内での豚肉供給量増加の懸念などから、さらに下落したと考えられる。
(注) 詳細は、海外情報「野生イノシシで初のASF発生(ドイツ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002771.html)を参照されたい。
ドイツからの豚肉輸出、2020年1〜6月は中国向けが増加
ドイツの輸出先別輸出量の推移は表7の通りである。
中国では、同国内のASF発生を受けて、各地域からの豚肉輸入量が増加している(図11)。ドイツから中国向けの輸出量は2019年後半から増加傾向で推移しており、2020年1〜6月の輸出量は、前年同期比で約2倍となる23万3267トンと大幅に増加し、63.1%のシェアを占めた一方で、韓国、日本、香港、豪州向けは減少した。しかし、上述の通り、ドイツでのASF発生を受け、現在、中国は輸入量の約2割を占めるドイツ産豚肉の一時輸入停止措置を取っている。そのため、現地報道情報によると、EU最大の豚肉輸出国であるスペインやデンマーク、オランダなどからの中国向け輸出の増加が見込まれるかもしれないとしている。また別の報道情報によると、EU以外では米国が中国向け輸出の一部を補完する可能性があるが、安定的な量と品質を供給してきたドイツ産は中国国内で根強い需要があり、規格が異なる製品が全てドイツ産に取って代わる可能性は低いとしている。
(調査情報部 小林 智也)