8月の生乳生産量は、前年同月比5.3%増
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2020年8月の生乳生産量は、前年同月比5.3%増の146万8000トンとやや増加し、5月以降4カ月連続で前年同月を上回った(図21)。干ばつは南島の一部を除き大幅に改善され、牧草にとって良好な状態が継続していることから、9月の生乳生産量も増加すると予想されている。現地報道によると、生産者は、この状況を生かし、例年より多くのサイレージを調整し、飼料の貯蔵を進めているという。一方で、今後6カ月の間に、ラニーニャ(同じ海域で海面水温が平年より低い状態が持続する現象)の発生が予測されており、今後乾燥した気候が継続した場合、牧草の生育と好調に推移する生乳生産への影響が懸念されている。
8月の乳製品輸出量、脱脂粉乳を除く主要3品目が前年同月より増加
ニュージーランド統計局(Statistics NZ)によると、2020年8月の乳製品主要4品目の輸出量は、脱脂粉乳が前年同月を下回る一方、全粉乳、バター類、チーズは前年同月を上回った(表9、図22)。
脱脂粉乳については、主要輸出先である中国向けが前年同月比9.6%減の3444トンとかなりの程度減少し、全体では同18.8%減の8735トンと大幅に減少し、2カ月連続で前年同月を下回った。従って、7〜8月の累計でも前年同期比35.2%減の2万9498トンと大幅に減少した。
一方、全粉乳は、7月に中国に次いで輸出量が多かったアラブ首長国連邦向けなどが減少したものの、中国向けは前年同月比40.4%増の1万5839トンと大幅に増加し、全体では、同46.2%増の5万348トンと大幅に増加した。また、7〜8月の累計でも前年同期比19.1%増の15万7250トンと大幅に増加した。
バター類は前年同月比10.3%増の1万4401トンとかなりの程度増加し、中国、日本、米国向けなどの主要輸出先は、いずれも前年同月を上回った。しかし、7〜8月の累計では前年同期比5.4%減の4万7067トンとやや減少した。
チーズは、主要輸出先である日本向けが前年同月比43.0%増の4896トンと大幅に増加したほか、中国や韓国向けも前年同月を上回った。全体では、同32.4%増の1万9375トンと6カ月ぶりに前年同月を上回った。一方、7〜8月の累計では前年同期比3.3%減の4万6015トンとやや減少した。
乳製品国際価格は、バターを除く3品目が前回から上昇
2020年9月15日に開催されたグローバルデイリートレード(GDT:月2回開催されるフォンテラ社主催の電子オークション。乳製品の国際価格の指標とされる)の乳製品主要4品目の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表10、図23)。
前回開催(同年9月1日)時との比較では、脱脂粉乳の価格は、前回比8.5%高の1トン当たり2889米ドル(30万9000円)であった。主要輸出先である北アジア
(注)の買いが強かったものの、東南アジアやオセアニアからの買いは前回よりも下回ったことから、全体としてはわずかな上昇となった。
全粉乳は、同3.5%高の同2985米ドル(31万9000円)であった。中国からの買いは前回を下回った一方、東南アジア、オセアニアなどからの買いが前回より強かった。
バターは、同1.6%安の同3282米ドル(35万1000円)で、前回から価格はわずかに上回った。北アジアの買いは、前回より下回ったものの昨年同時期と比較すると、大幅に上回った。
チーズは、同7.2%高の同3674米ドル(39万3000円)とかなりの程度上昇し、特に中南米からの買いが強かった。
現地報道によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響から、市場は不透明な状態が続くとしており、今後の動向を注視していく必要がある。
(注) ニュージーランド外務貿易省は、中国、日本、香港、韓国、台湾を北アジアとしている。
(調査情報部 廣田 李花子)