2020年1〜6月の生乳生産量は増加
中国国家統計局によると、2020年1〜6月の生乳生産量は前年同期比7.9%増の1431万トンであった。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の流行中は流通制限により生乳生産量が減少したが、3月には多くの乳業メーカーが工場の稼働を再開したため、その影響は一時的かつ限定的であった
(注1)。
中国では、乳製品には良質なタンパク質が含まれていること、ヨーグルトは免疫増強に良いとされていることなどから乳製品需要が拡大しており、今後も生乳生産量は増加傾向で推移すると見込まれている。
(注1) COVID−19の生乳生産量への影響についての詳細は、海外情報「新型コロナウイルスの酪農業に対する影響に関する調査について(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002665.html)を参照されたい。
2020年1〜6月の乳製品生産量は減少も、今後は増加傾向で推移
中国乳業協会によると、年間事業収入2000万元(約3億3200万円:1元=16.6円)以上の乳業メーカーの乳製品生産量は、2020年1〜6月は前年同期比2.5%減の1279万トン(製品重量ベース)であった。外食や学校給食、食堂などでチーズやヨーグルトなどの消費が減少したこと、比較的保存性の高い粉乳の生産が増えたことなどが要因と考えられる。
一方、同年4月以降の乳製品生産量は増産傾向で推移しており、6月の生産量は前年同月比7.8%増の254万トンであった。前述の通り乳製品需要は拡大していることから、今後は年間累計でも増産に転じると考えられる。
なお、乳業メーカー各社は、COVID−19流行中に積極的に医療機関などに乳製品を寄贈したり、既存の牛乳配達の仕組みを利用して消費者に肉や野菜も配達したりするなど、乳製品の消費拡大や社会貢献に努めた。
生乳価格は需要増により上昇
乳製品需要が増加する中、生乳生産量は増加しているものの、生乳価格は上昇傾向で推移している(図24)。中国で9月から新学期が始まったことや、国慶節(2020年は10月1〜7日)に向け贈答品需要が増えてきたことなどから、生乳価格は上昇傾向で推移し、9月は1キログラム当たり3.8元(63円)となった。
国内での増産が難しい乳製品の輸入量が増加
2020年1〜7月の乳製品輸入量については、前年同期と比べて脱脂粉乳、ヨーグルトが減少し、チーズ、バターおよびホエイが増加した(表11)。
製品によって多寡はあるが、乳製品の国内需要は総じて増加している。このため、全粉乳、脱脂粉乳、育児用調製粉乳(以下「育粉」という)などの粉乳類、また、飲用乳やヨーグルトなど国内での増産が可能な製品では、輸入量が増加しなかったと考えられる。一方、チーズおよびバターは、国内の生産設備が十分でないため、輸入量が増加したと考えられる。
またホエイの輸入量は、前年同期比37.1%増の33万7607トンとかなり大幅に増加した(図25)。中国国内で豚飼養頭数が増加し、飼料需要が増加したことで
(注2)、飼料原料として輸入したためとされ、また中国乳業協会によると、育粉の原料としての輸入量も増加しているとのことである。
(注2) 豚飼養頭数の推移についての詳細は、『畜産の情報』2020年9月号「豚肉生産量は回復の兆しも、輸入量は引き続き増加」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001304.html)を参照されたい。
(調査情報部 寺西 梨衣)