現社長(本川和幸氏)の祖父が1955年に日田盆地内(北部九州のほぼ中央、大分県西部に位置する日田市)で酪農を開始したのがホンカワグループの始まりである。その後、現社長の父親(本川角重氏)が酪農経営に参画したのが1967年であり、当時の飼養頭数は20頭であった。角重氏は1971年に後継者育成資金を利用し10頭の増頭を行い、30頭をつなぎ牛舎で飼養するようになった。1975年には農業構造改善事業により半額補助を受け、農地取得および農業機械購入のために5000万円を借り入れ、同市内の誠和町美濃台へ移転した。飼養管理に関しては、これまでのつなぎ飼い牛舎からフリーストール・ミルキングパーラー併設牛舎への転換を図り、飼養規模を60頭まで拡大した。1979年に本川牧場を設立し、資本金200万円で法人化した。
1983年には、飼料用原料として焼酎かすの取り扱いを開始し、1987年に発酵TMRを製造販売する株式会社ホンカワ(資本金1000万円)をグループ企業として設立、1989年にはTMR工場を建設した。飼料会社の設立により、地域内の産業連携を視野に入れ、地元醸造所の麦焼酎かすなどを飼料原材料として取り入れたほか、牛ふん堆肥を使用したアスパラガス、白ネギ栽培を行うなど、循環型農業の展開を図っている。1992年には畜産環境対策事業により堆肥舎を建設している。
1993年ごろより、今後5〜6年で搾乳牛を300〜500頭へ増頭し完全雇用による経営とする意向を持ち、認定農業者となった後、ET事業への取り組み、経産牛を120頭へと拡大するなどの展開を図っていった。1996年には、農業経営基盤強化資金(以下「スーパーL資金」という)により、直下型換気扇を設置したフリーバーン牛舎(4割補助)を新築し、環境に配慮した500頭規模の畜舎を建設した。併せて20頭複列のへリングボーンパーラー(2割補助)を導入し、初妊牛200頭を導入した。1998年には、本川牧場の資本金を1000万円に増資し、社員寮の新築を、1999年には、育成牛300頭の牛舎を新築するとともに、経産牛は640頭規模まで拡大した。2000年には、米国での酪農経営研修中にロータリーパーラーを視察する機会があり導入を考え始めた。数億円にも上る設置費用を回収するためには、さらなる飼養頭数の拡大が必要であったため、帰国後まず、牛舎を増築し、規模拡大を図った。そして、再びスーパーL資金を利用しロータリーパーラーの導入を実現し、ロータリーパーラーとへリングボーンパーラーで約1500頭の搾乳牛の搾乳を可能とした(写真1、2)。
2002年には、海外から牧草などを輸入販売するJ-アグリ株式会社を資本金1000万円で設立するとともに畜産経営活性化事業で和牛繁殖・育成牛舎を新築し、熊本県阿蘇の草地で育成牛放牧を開始している。さらに2003年には米国・カリフォルニア州に関連会社J-Agri Corporationを設立し、牧草の買い付けと日本への輸出を本格化した。また同時期に堆肥処理施設を新設している。
2006年には大分県日田市天瀬町塚田に農地を購入し、翌年に放牧と白ネギの栽培を開始した。さらに2009年にはベトナムのビタン市にHonkawa Vina Co.,Ltd.を設立し、ドライバガス、バガスサイレージなどを製造し、日本への輸出を開始している。
2009年ごろより、現社長の本川和幸氏が獣医師として勤務した後、本川牧場に入社し実質的に経営を担うようになった。図1に示すように、同社の社訓は「共生」、経営理念は「わたしたちは人と自然を大切にし、食と農の共生の輪をひろげ、地域の発展と豊かなくらしに貢献します」であるが、それに加え和幸氏は「牛にやさしい」経営を目指している。この理念に基づき、2007年から子牛における「呼吸器や消化器の疾病予防」と、搾乳牛における「乳房炎の発生を減らし、良い乳質の生乳を生産する」を目標に飼養管理の変更を行い、2012年からは、クラウドシステムによるオリジナルの牛群管理ツールを得たことで乳牛の「代謝性疾患・産じょく期疾病を減らし、多頭飼育酪農で乳牛の長命連産化を図る」に取り組み、乳量および売上高の増加に成功している。また、経営改善の中で2015年に元銀行員の大脇建氏を人事部長として迎え、人事査定と能力に基づく給与制度などを導入するとともに、後継者は社員から育てるとの意識の下、「農家から企業へ」を掲げている(日本農業法人協会2017)。
2017年、社長が角重氏から和幸氏へと交代した。同年、600頭規模の育成牛舎を増築することにより育成牛だけで1000頭規模の経営へと拡大した。2019年には搾乳牛牛舎に一度に60頭搾乳可能なロータリーパーラーを導入し、2020年2月12日より本稼働している。
現在、ロータリーパーラーでの搾乳頭数は約2000頭であり、産次数や泌乳量といった牛の泌乳ステージに応じて1日2回搾乳、3回搾乳に分類されている。搾乳は朝の3時、昼は11時、夜は19時から行われている。1周およそ12分程度であり、1頭当たり搾乳時間は4〜5分程度となっている。