生乳の道外移出量、平成16年9月以来の最高水準

北海道の生乳生産量、前年同月比1.9%増
　全国の生乳生産量は令和元年9月から13カ月連続で前年を上回って推移しており、2年9月は、58万9056トンとなった（図24）。9月としては6年ぶりに台風の上陸がない月であったが、一部の地域では残暑による泌乳量の減少もあり、前年同月比0.9%増と、前年同月をわずかに上回る水準にとどまった。
   
　地域別に見ると、北海道が33万7553トン（同1.9%増）と前年同月をわずかに上回った。一方、都府県は主に上旬から中旬にかけて猛暑に見舞われた影響から、25万1503トン（同0.3%減）と6カ月ぶりに前年同月を下回った。
　また、用途別生乳処理量を仕向け先別に見ると、牛乳等向けは35万5024トン（同1.6%増）と前年同月をわずかに上回ったが、伸び率は8月以降縮小傾向にある。一方、乳製品向けは23万274トン（同0.1%増）と4カ月ぶりに前年同月を上回った。このうち、クリーム等向け^（注）は、9万7942トン（同3.8%減）と減少が続いているが、チーズ向けは3万2761トン（同1.4%増）、脱脂粉乳・バター等向けは9万7312トン（同5.1%増）となった（農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」）。

_{（注） クリーム向け、脱脂濃縮乳向けおよび濃縮乳向けの合計。}

牛乳生産量は、4カ月連続で前年同月を上回る
　9月の牛乳生産量は、28万1434キロリットル（前年同月比0.7%増）と前年同月を4カ月連続で上回った（農林水産省「牛乳乳製品統計」）。区分別に見ると、学校給食用は、3万5836キロリットル（同6.5%増）と前年同月をかなりの程度上回った。一方、業務用は、2万5556キロリットル（同10.9%減）と、前月から2186キロリットル増加したものの、依然として前年同月をかなりの程度下回って推移している。

北海道の生乳移出量増加
　9月の北海道から都府県への生乳移出量は、6万4217トンと、平成16年9月（6万4727トン）以来の最高水準となった（図25）。令和元年9月は猛暑と台風の影響で都府県の生乳生産量が減少し、それに伴って道外移出量が前年同月を25.9%上回ったが、本年9月は、さらに前年同月を3.9%上回った。猛暑により都府県の生乳生産量が減少したことに加え、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響による小中学校の夏休み短縮で、学校給食用牛乳の供給量が増加する中で、都府県の貯乳量が例年より減少し、より多くの移出が必要とされた。また、牛乳などの家庭内消費量の増加も道外移出量増加の要因として挙げられる。
   
　なお、本年の北海道の生乳移出量は、COVID-19の影響により5月に生乳需給が緩和したことから、同月は前年同月を23.2%下回る水準となったものの、7月には、小中学校の夏休み短縮により、前年同月を25.5%上回る水準と一気にひっ迫傾向となり、例年と大きく異なる推移となった。

令和2年度上半期の牛乳等向け処理量、前年同期比1.1%増
　令和2年度上半期の用途別生乳処理量は、COVID-19の影響を受け、例年と大きく異なる月はあったものの、6カ月分の数量としては、牛乳等向けが206万4751トン（前年同期比1.1％増）、乳製品向けが165万2042トン（同1.7%増）と、いずれも前年同期をわずかに上回る水準に落ち着いた（表）。
   
　牛乳等向けについては、春先の学校給食用牛乳の供給停止や飲食店などの休業に伴い、業務用が同17.7%減と大幅に減少した。一方、小売をはじめとする直接飲用向けが堅調であったことに加え、農林水産省が4月以降実施しているプラスワンプロジェクトや業界関係者による販売促進の取り組みが飲用消費を支えたことから、全体としては前年同期をわずかに上回った。
　乳製品向けについては、クリーム等向けは、インバウンド需要の減少などから59万3925トン（同6.2%減）と前年同期をかなりの程度下回った。一方、脱脂粉乳・バター等向けは、春から夏にかけて一時的に余剰となった生乳の廃棄を回避するため、長期保存可能な脱脂粉乳およびバターの緊急的な増産が行われたことから、82万7939トン（同9.1%増）と、前年同期をかなりの程度上回った。また、チーズ向けは、巣ごもり需要などによる消費拡大が見られた中で、脱脂粉乳・バター等向けと同様の理由から長期保存可能なハード系チーズの製造に仕向けられたことにより、21万8758トン（同4.2%増）と前年同期をやや上回った。