牛肉輸出量、5カ月ぶりに増加に転ずる

過去最高を記録した韓国向けが輸出先首位に
　米国農務省経済調査局（USDA/ERS）によると、2020年8月の牛肉輸出量は前年同月比2.4%増の12万1446トンと前年をわずかに上回り、本年4月以降の減少基調から5カ月ぶりに増加に転じた（表1）。一方、本年1〜8月の輸出量については、5、6月の落ち込み（前年同月比30.9%減、同33.0%減とそれぞれ大幅な減少）を受け、前年同期比6.4%減の85万9850トンとなった。なお、5、6月の落ち込みについて、USDAは、4月中旬以降、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の拡大に伴う食肉処理場の操業停止および処理能力の低下によりと畜頭数・牛肉生産量が減少したことや、その影響を受けた牛肉相場の上昇により米国産牛肉の価格競争力が低下したことが要因であるとしている。  
　8月の輸出量を輸出先別に見ると、2018年以降、首位が日本向け、第2位が韓国向けとなっていたものの、本年8月は日本向けが前年同月比1.7%減の3万1688トンと第2位、韓国向けが同24.7%増の3万4048トンと首位になった。なお、日本向けが第2位以下となったのは2015年12月以来のことである。その他の輸出先を見ると、カナダ向けが同7.1%増の1万1461トン、台湾向けが同19.8%増の1万429トン、メキシコ向けが同45.9%減の8490トン、香港向けが同14.1%増の7799トンとなった。なお、これらの輸出先と比較した場合の絶対量は多くないものの、中国向けは同約4.0倍の4812トンと大幅に増加し、2020年1〜8月の累計でも前年同期比で約2.2倍の増加となっている。
　こうした状況について、米国食肉輸出連合会（USMEF）は、「牛肉生産量はCOVID-19の影響による落ち込みから回復を続けており、8月の輸出量も堅調であった。中国、台湾では外食産業の回復が順調に進んでおり、日本、韓国などその他の主要市場でも改善が見られている。また、外食産業の需要が増加したとしても、小売、オンライン販売の売り上げは引き続き堅調に推移すると思われる。単月で過去最高の輸出量を記録した韓国向けや、8年連続での輸出量の記録更新が望める台湾向け、さらには中国向けについても記録的な水準であり、本年第4四半期の需要がさらに高まることを期待している」とコメントしている。
　また、「日本向けは、米国サプライチェーンの混乱により内臓肉生産が十分に回復していないため内臓肉の輸出量が減少しているが、2020年累計で見ると牛バラ肉（ショートプレート）を中心に増加している。外食産業の制限と観光業が振るわないメキシコ向けは、米国産牛肉の輸出に深刻な影響を及ぼしている」との見解を示している。

フィードロット飼養頭数、前年比で3カ月連続して増加
　米国農務省全国農業統計局（USDA/NASS）が2020年10月23日に公表した「Cattle on Feed」によると、9月のフィードロット導入頭数は前年同月比5.9%増の222万7000頭と前年同月をやや上回る結果となった。また、出荷頭数は同6.2%増の184万6000頭と、前年同月をかなりの程度上回った。
　この結果、2020年10月1日時点のフィードロット飼養頭数は同3.8%増の1171万7000頭と3カ月連続で前年を上回り、現行の形式で調査が開始された1996年以降の10月としては最多となった（図1）。  
　フィードロット飼養頭数は、堅調な肥育牛価格を背景にフィードロットの収益性が良好であったため、2018年以降記録的水準で推移していた。しかし、COVID-19の拡大に伴う牛肉市場の混乱や、肥育牛価格が低迷したこと（図2）などにより導入頭数が減少し、4、5月の同飼養頭数も大幅に減少した。その後、大幅に減少していたと畜頭数が前年並みに回復し（図3）、肥育牛価格が緩やかながら回復したことなどから、フィードロット導入頭数も増加に転じ、8月以降の同飼養頭数は再び記録的水準にまで達している。