2019/20年度、牛と畜頭数、牛肉生産量が増加
ニュージーランド統計局によると、2019/20年度(10月〜翌9月)の牛と畜頭数は、11月および3〜5月に前年同月を下回ったものの、6月以降は4カ月連続で前年同月を上回り、年度累計では前年度比2.2%増の269万頭となった(図7)。内訳を見ると、去勢牛59万頭(同3.1%増)、未経産牛51万頭(同1.1%増)、経産牛104万頭(同4.5%増)、雄牛54万頭(同2.5%減)であった。去勢牛のと畜頭数が増加したのは、近年の肉用繁殖雌牛の増頭によるものである。この結果、2019/20年度の牛肉生産量(枝肉重量ベース)は同2.1%増の68万トンとなった。
牛肉の輸出先別輸出量、中国を除く主要5カ国向けが前年度より増加
ニュージーランド統計局によると、2019/20年度の牛肉輸出量は、生産量の増加に伴い、46万5406トン(前年度比2.7%増)とわずかに増加した(表6)。このうち冷蔵品は3万4957トン(同0.1%増)、冷凍品は42万9421トン(同2.7%増)といずれも増加した。
輸出先別に見ると、中国向けは前年度に続き最大の輸出先であったものの、17万8823トン(同8.6%減)とかなりの程度減少した。現地報道によると、米中経済貿易協定の第1段階の合意により米国産の中国向け輸出量が大幅に増加しているほか、南米産の中国市場への参入などから競争が激しくなったことが背景にあるとのことである。
また、米国向けは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う家庭での調理機会の増加などを背景に、調理の手間が少ないひき肉への需要が高まったことなどにより、15万8303トン(同15.5%増)とかなり大きく増加した。しかし直近の輸出量を月別に見ると、2020年8月以降、2カ月連続で1万トンを割り込んでいる。現地報道では、COVID-19による市場の混乱を受けて、カナダや韓国向けの輸出量が増加するなど、輸出先が多様化したことが背景にあるとしている。
日本向けも、2万2334トン(同16.8%増)と大幅に増加した。月別に見ると、2020年3月に3159トン(前年同月比37.3%増)と大幅に増加し、2015年1月以降では最大の輸出量となった。
2020/21年度の輸出向け牛と畜頭数、わずかに減少見込み
ビーフ・アンド・ラム・ニュージーランド(BLNZ)
(注)が公表した「New Season Outlook 2020?21」によると、2020/21年度の輸出向け牛と畜頭数は、261万1000頭(前年度比0.9%減)とわずかに減少することが見込まれている(表7)。内訳を見ると、未経産牛および経産牛は、干ばつによる
淘汰後の牛群再構築の動きがあることから、いずれもやや減少するとしている。一方、雄牛は前年度並み、去勢牛はやや増加するとしている。
この結果、輸出向け牛肉生産量(枝肉重量ベース)は、66万1000トン(同0.1%減)とほぼ前年度並みの水準になると見込んでいる。従って、牛肉輸出量(船積重量ベース)についても、45万3000トン(同0.1%減)と前年度並みとしている。
なお、BLNZは、中国ではアフリカ豚熱の流行による豚飼養頭数の激減によって食肉輸入需要が高まり、豚肉だけでなく牛肉への需要増加も一部で見られるものの、世界全体で見るとCOVID-19の影響を受けた外食産業での需要回復が依然見込めないため、引き続き牛肉需要は伸び悩むと見込んでいる。
(注) BLNZは、2010年に、畜産農家の出資により業界振興を目的とし、設立された団体。主な活動は、国内外のニュージーランド産牛肉および羊肉の販売促進や研究開発、市場開拓など。
(調査情報部 廣田 李花子)