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海外の需給動向【豚肉/米国】  畜産の情報  2020年12月号

6〜8月の分娩母豚頭数、先行き不透明感から減少

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8月の豚肉輸出量、前年同月比3.6%増
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が2020年10月7日に更新した「Livestock and Meat International Trade Data」によると、同年8月の豚肉輸出量(枝肉重量ベース)は、中国・香港向けなどの増加により、23万9048トン(前年同月比3.6%増)と前年同月をやや上回った(表8、図8)。輸出先別に見ると、中国・香港向けは、ピーク時と比べると増加幅は縮小しているものの、引き続き中国国内のアフリカ豚熱流行に伴う輸入需要の増加を背景に、前年を大幅に上回って推移しており、5万3139トン(同20.8%増)となった。




 中国・香港以外の主要国向けでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のための規制などによる外食需要の減少、経済の悪化や各国の需給の混乱により前年同月を下回っている国があるものの、中国・香港向けなどの増加分がこの減少分を上回っていることから、輸出量全体では増加した。なお、ベトナム向け(表8の「その他」に含まれる)は、6217トン(前年同月比10.8倍)と、2019年2月以降の同国内でのアフリカ豚熱流行による輸入需要の増加で引き続き好調に推移している。
 今後の輸出量の見通しとして、USDAは、主要輸出先の景気悪化などによる需要減少を見込んでおり、伸び悩むとしている。また、現地報道では、中国が、ドイツ国内でのアフリカ豚熱発生による同国産豚肉の輸入停止を続けた場合の、代替可能な輸入先の一つに米国が挙げられているものの、米中貿易戦争の影響により、中国が米国からの輸入を増やすかどうかは不透明だとしている。一方、他の報道情報では、米国産が中国向け輸出の一部を補完する可能性はあるが、安定した品質で定量を供給してきたドイツ産は中国国内で根強い需要があり、規格が異なる他国産がすべてドイツ産に取って代わる可能性は低いとしている。

180ポンド以上の肥育豚の飼養頭数、前年同月比9.8%増
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年9月24日に公表した「Hogs and Pigs」によると、9月1日時点の豚飼養頭数は、繁殖豚や1腹当たり産子数(6〜8月)などが減少したことで、低重量の肥育豚が前年同月を下回ったものの、120ポンド以上の肥育豚が前年同月を上回ったことから、全体では、前年同月比0.7%増の7909万9000頭となった(表9)。飼養頭数のうち、120〜179ポンド(54〜81キログラム)の肥育豚は同6.1%増、180ポンド(82キログラム)以上の肥育豚は同9.8%増となり、いずれも余剰感は前回調査時(同年7月1日時点)から解消傾向にあるが、依然として、COVID-19の感染拡大による食肉処理場の稼働率低下の影響が残っているとみられる。
 

 
 また、6〜8月の分娩母豚頭数は前年同期比2.9%減の318万頭、1腹当たり産子数は同0.6%減の11.04頭といずれも前年同期をわずかに下回ったことから、産子数は同3.4%減の3511万5000頭となった。この減産の動きは、COVID-19の感染拡大による市場の混乱で生産者の収益性が悪化したことや、先行きの不透明感が続いていることが一因とみられる。低重量の肥育豚の飼養頭数が減少していることから、年末から年明けにかけての豚肉生産量が減少する可能性がある。

(調査情報部 河村 侑紀)