繁殖雌豚および肥育豚は着実に増加
中国国家統計局によると、2020年9月末時点の総飼養頭数は前期(同年6月末時点)比約3000万頭増の3億7039万頭となった(図9)。このうち、繁殖雌豚頭数は、同193万頭増の3822万頭となった。こうした増加の背景には、頭数不足を補うため、デンマーク、フランスおよび英国から繁殖雌豚を生体で輸入していること、肥育もと豚の繁殖用への供用を増やしていること、これにより肥育豚頭数が回復していることなどがあると考えられる。
豚と畜頭数は前年同月を上回る
肥育豚頭数が回復傾向にあること、国慶節の連休(2020年は10月1〜8日)に向けて豚肉需要が増加することに伴い、2020年9月のと畜頭数は前年同月比4.2%増の1285万頭と、肥育豚の不足が顕著に現れた2019年8月以降初めて前年同月を上回った(図10)。こうした頭数の回復から判断すると、今後は来年の春節(例年は1月下旬〜2月上旬)に向け、増加傾向が続くと考えられる。
豚肉価格は高値も季節需要により変動
中国国家統計局によると、2020年第1〜3四半期の豚肉生産量は、前年同期比10.8%減の2837万トンとなり、いまだに豚肉の供給不足であると考えられる(図11)。一方、第3四半期単独では同18.0%増の839万トンと、順調に増産していることがわかる。中国農業農村部は、2020年の豚肉生産量は3934万トン、2021年は5000万トン以上、2022年には5400万トン程度にまで回復すると予測している。
豚肉価格は高値も季節需要により変動
一般的に、豚肉および子豚価格は国慶節や春節などの需要期に高くなり、それ以外は安くなる傾向があるが、2019年は豚肉需給のひっ迫により、季節に関係なく価格は上昇していた。2020年も高値が続いているものの、春節の連休(2020年は1月24日〜2月2日)や9月の学校の始業など需要が高まる時期に向けて上昇し、それ以外の時期は下降する傾向が見られる。このため、本年10月の豚肉価格は前年同月比3.3%高の1キログラム当たり52.5元(835円:1元=15.9円)となったものの、直近1年はほぼ横ばいで推移している(図12)。
また、子豚価格も高値ではあるものの、喫緊の課題であった肥育もと豚不足が解消されたため9月以降は下降傾向にあり、10月は同99.5元(1582円)となった。
中国農業農村部は、今後も来年の春節などの需要期に豚肉価格は上昇するものの、2019年のような急騰はないと見込んでいる。
輸入量は春節に向け一時的に加速も長期的には落ち着く
豚肉輸入量は引き続き増加し、2020年1〜8月の累計では前年同期比約2.4倍の284万3257トンに達し、すでに2019年の輸入量を上回っている(表10)。欧米では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により一時的に一部の食肉処理場が操業を停止しているにもかかわらず、主要な輸入先からの輸入量は大幅に増加している。
今後は、春節などの需要期に向けて一時的に輸入が加速するものの、中国国内の豚肉供給量が回復していることから、長期的には買い付けは落ち着くと考えられている。しかしながら、主要輸入先であるドイツでの2020年9月のアフリカ豚熱発生を受け、同月以降は同国産豚肉などの輸入を停止しており、代替として米中経済貿易協定の第1段階の合意における中国の輸入目標達成に向けた北米産や、輸出余力があるとみられる南米産など、輸入先によっては急増する可能性もあるとの意見もある。
(調査情報部 寺西 梨衣)