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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報  2020年12月号

バター価格は新型コロナウイルス感染症拡大前の水準まで回復

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8月の生乳出荷量は前年同月比0.4%増
 欧州委員会によると、2020年8月の生乳出荷量(EU27カ国)は、前年同月をわずかに上回る1201万1770トン(前年同月比0.4%増)となった(表11)。また、同年1〜8月の累計では、9883万7800トン(前年同期比1.3%増)となった。

 
 8月の出荷量を加盟国別に見ると、ポーランド(前年同月比2.0%増)、アイルランド(同2.9%増)、スペイン(同0.5%増)、デンマーク(同0.9%増)などが前年同月を上回った一方で、ドイツ(同0.8%減)、フランス(同0.9%減)、オランダ(同1.5%減)、ベルギー(同0.3%減)は前年同月を下回った。
 欧州委員会が10月に公表した農畜産物の短期的需給見通し(注)の中で、第3四半期の生乳出荷量は、7月までの生乳出荷量が好調であったため、前年同期比1%増と見込まれている。また、第4四半期は、前年同期並みと見込まれている。

(注) 海外情報「欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002795.html)を参照されたい。

乳製品価格は安定的に推移も生乳価格は前年を下回る可能性も
 欧州委員会によると、乳製品価格は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、2020年3月から5月にかけて、脱脂粉乳、全粉乳およびバターが下落傾向で推移した(図13)。その後、脱脂粉乳および全粉乳が横ばいで推移する一方で、バターは上昇傾向で推移している。直近の10月25日の週平均のバター価格は100キログラム当たり344.93ユーロと、COVID-19感染拡大前の水準近くまで回復している。上述の短期的需給見通しでは、バターの価格上昇と脱脂粉乳の価格安定によって、COVID-19の影響で下落した生乳価格が回復したとされている。しかし、今後の生乳価格は、需要の回復を供給の増加が上回ることが見込まれるため、昨年を下回る水準で推移する可能性が高いとされている。

 
チーズの輸出量は、前年同期をかなりの程度上回る
 2020年1〜8月のチーズの輸出量は、59万8343トン(前年同期比8.9%増)となった(表12)。輸出先別に見ると、米国向けが7万3790トン(同15.9%減)と減少した一方で、日本向けが8万6357トン(同12.5%増)、スイス向けが4万6980トン(同12.1%増)、韓国向けが3万7290トン(同46.4%増)、ウクライナ向けが2万9659トン(同約2.3倍)と軒並み増加となった。上述の短期的需給見通しの中では、EU産チーズの国際的な需要は高く、米国向けの減少分は他国向けの増加分で埋め合わせがされているとしている。また、チーズの生産量が増加している中、EU域内での乳たんぱく質に対する需要や中国からの輸入需要が増加していることから、より多くの乾燥ホエイが生産されると見込まれている。
 
 
(調査情報部 小林 智也)