肉用種は前年比増、乳用種は前年比減
肉用牛の飼養戸数は、生産者の高齢化などにより離農が進んでいることから減少傾向にあり、令和2年の肉用牛の飼養戸数は4万3900戸(前年比3.7%減)と前年からやや減少した(表1)。また、肉用牛の飼養頭数は平成28年までは7年連続で減少していたものの、最近は繁殖基盤の強化により増加傾向で推移し、令和2年の肉用牛飼養頭数は255万5000頭(同1.1%増)となった(図18)。この結果、肉用牛の1戸当たり飼養頭数は、前年から2.8頭増加して58.2頭となった。
肉用牛は、肉用種および乳用種
(注)に大別され、飼養頭数のうち7割が肉用種(179万2000頭、前年比2.3%増)で、3割が乳用種(76万3400頭、同1.7%減)となった(図19)。
さらに肉用種の内訳を見ると、子取り用めす牛が62万2000頭(全体に占める割合は24%)、育成牛が38万5200頭(同15%)、肥育用牛が78万4600頭(同31%)となった。子取り用めす牛は平成27年まで5年連続で減少していたものの、28年に増加に転じ、繁殖基盤の強化が図られている。
乳用種の内訳を見ると、交雑種が49万5400頭(全体に占める割合は19%)、ホルスタイン種ほかが26万7900頭(同11%)となった。
(注) 「畜産統計」では、肉用牛の乳用種とは、ホルスタイン種、ジャージー種などの乳用種のうち、肉用を目的に飼養している牛で、交雑種を含むと定義されている。
「200頭以上」の経営で肉用牛飼養頭数全体の約6割
肉用牛の総飼養頭数規模別飼養戸数を見ると、1〜4頭の階層が最も多く、全体の24%を占める1万700戸(前年比7.0%減)、次いで5〜9頭の階層が、全体の20%を占める8890戸(同6.1%減)となり、いずれも前年をかなりの程度下回った(図20)。一方、500頭以上の階層は全体の2%を占める743戸(同1.5%増)、200〜499頭の階層は全体の3%を占める1400戸(同1.4%増)となり、いずれも前年をわずかに上回った。
総飼養頭数規模別飼養頭数を見ると、500頭以上の階層が最も多く、全体の41%を占める104万2000頭(同3.1%増)、次いで200〜499頭の階層が全体の17%を占める43万6900頭(同1.7%増)と、200頭以上の飼養規模での頭数は全体の6割近くとなり、戸数は少ないものの大規模経営で多くの肉用牛が飼養されていることが分かる(図21)。
上位4道県で肉用牛飼養頭数全体の約5割
都道府県ごとの肉用牛の飼養頭数を見ると、最も飼養頭数が多いのは北海道(52万頭)で肉用牛全体の21%を占めている(表2)。次いで、鹿児島(34万頭、全体に占める割合は13%)、宮崎(24万頭、同10%)、熊本(13万頭、同5%)となり、上位4道県で全体の約5割を占める。なお、全国農業地域別に見ると、九州のシェアは36%となり、最大の生産地域になっている。
都道府県ごとの肉用種の飼養頭数を見ると、最も飼養頭数が多いのは鹿児島(33万頭)で肉用種全体の18%を占めている。次いで、宮崎(22万頭、全体に占める割合は12%)、北海道(20万頭、同11%)、熊本(10万頭、同6%)となり、上位4道県で全体の約5割を占める。
都道府県ごとの乳用種の飼養頭数を見ると、最も飼養頭数が多いのは北海道(33万頭)で乳用種全体の43%を占めている。次いで、栃木(4万頭、全体に占める割合は5%)、愛知(3万頭、同4%)、千葉(3万頭、同4%)となり、主要な酪農生産地域が上位を占めている。
北海道の肉用牛の飼養頭数は、6割強が乳用種(33万頭)、4割弱が肉用種(20万頭)となっている。最大の酪農生産地域であることを背景に、北海道は最大の乳用種飼養頭数を誇るとともに、肉用種生産頭数も全国第3位と、肉用牛の大産地となっていることが分かる。
(畜産振興部 前田 絵梨)